日々平穏

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なんちゃって美食家を目指して

ストレッチ 頭痛対策

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ストレッチの習慣はありますか?

 

ストレッチをしないと全身の筋肉が次第に硬くなり、痛みや動かしづらさにつながります。

 

それによる異常は様々で、気が付かずに生活の質が下がっていることも多いです。また、様々な症状を訴え病院を受診しても、検査で異常がないと言われることがほとんどです。

 

ストレッチの必要性と方法についてまとめます。

今回は特に、頭痛の記事を書いたので頭や首を中心にしています。

 

khachi.hatenablog.com

 

 

 

 

ストレッチの必要性

何故ストレッチをする必要があるのか。

 

「血流を改善し、筋肉の柔軟にする」

この一言に尽きます。

 

頭や首、肩の筋肉は常に労働しています

頭や腕は5-10㎏前後の重さがあり、それを毎日支えているわけです。

 

しかし6時間前後の休息のみで強制労働が続くと、気が付けば疲労が蓄積し筋肉の緊張が亢進していきます。

 

その結果血流が低下し筋肉が硬くなり、他の筋肉や部位を引っ張るようになるため頭痛や肩こりの原因となるのです。

 

また、筋肉の緊張が亢進し血流が低下している状態では、新陳代謝も低下してしまいます。体の冷えや体調不良、食欲低下の原因になることもあります。

 

 

ストレッチの方法

以下について解説していきます。

・回数

・時間

・タイミング

・方法

 

回数

よく見る間違いとして、回数が少ないというものがあります。一度やっておしまいで、何となくの満足を得るのみになっている方が多い印象があります。

 

ではどの程度行えばいいのか。

基本的には一つの筋肉あたり、2-3回以上行うのが良いです。

 

左右ありますので、それを2-3回となるとそれなりに時間がかかります。しかしそれくらいしないと緊張はとれません。

 

今まで習慣がなかった方だと、ほぐすのに月単位の時間がかかることもあります。

 

 

時間

回数同様、こちらも短い方が多いです。

基本的に、一つの筋肉一回当たり20-30秒程度行うのが良いです。

 

5-10秒程度が多く、それでは十分に筋肉が伸びません。

これは体感的なものではなく、下記の様な研究も行われています。

 

www.researchgate.net

 

これは1994年に行われた研究で、ハムストリングス(足の筋肉)の筋緊張とストレッチ時間を比較した文献です。

conclusion(結論)では、30-60秒が良いとしています。

 

無論症例数も少なく、比較方法や統計学的影響力が少ない研究ではあります。

 

5個の筋肉を左右で2-3回、20-30秒行うだけで400-900秒かかります。これは6-15分となります。

 

慣れてきて筋肉の数を増やすと、それだけで30分は優に超えるわけです。それ位伸ばして初めて効果があると思ってください。

 

 

タイミング

筋トレやスポーツの後に行うイメージが強いと思います。しかし今回は頭痛や肩こりを対象にしているため、別のタイミングを推奨します。

 

それは「風呂上り」です。

風呂上りは体が温まり、筋肉の血流量も増えています。その時にストレッチをすることで、筋肉を十分に伸ばすことが可能です。

 

また夜風呂上りにストレッチをすると、全身の気血の巡りもよくなります。その結果寝付きやすくなり、睡眠の質も上がると言われています。

 

頭痛や肩こりがある方は生活習慣が悪く、往々にして不眠や睡眠の質が低下している場合が多いため、是非取り入れたいものです。

 

可能であれば、シャワー浴ではなく、浴槽につかることをお勧めします。

 

 

方法

具体的な方法について解説します。

Google等で調べると情報が多く悩むと思います。

 

今回はストレッチ習慣がなく、頭痛や肩こりに悩むかた向けに紹介します。前述した通り慣れてきた場合は筋肉の数を増やすとより効果的です。

 

まずは全般的な注意事項から。

 

・どの筋肉を伸ばすのか意識する

ストレッチの目的は筋肉を伸ばす事です。当たり前だと思うかもしれませんんが、どの筋肉を伸ばすか認識しておらず、十分に伸ばせていない場合が多いのです。

 

どの筋肉がどこにつながっていて、どんな働きがあり、どう伸ばせば効率が良いかをイメージする必要があります。直感的に伸ばせていることが分かる方には不要ですが、そうでない場合は理解することで効果が上がります。

 

・ゆっくり伸ばすイメージ

首は特にそうですが、目的の筋肉を一方向にゆっくりが原則です。

 

首をぐるぐるとまわしてたり、早く動かす動作はかえって逆効果になります。特に首の場合は、回す力によって血管が裂けてしまい、若くして脳梗塞になることがあります。

 

これを椎骨脳底動脈解離(ついこつのうていどうみゃくかいり)といい、不必要に圧迫するマッサージ等でも発症することがあります。

 

 

 ・ストレッチ方法

次に各筋肉のストレッチについてまとめます。

簡単にまとめると、

 

首を前と後ろ、横に倒す。

腕を後ろに回し、上と下で引っ張る。

腕を前で引っ張る。

 

これだけです。

初めはやり方を覚える必要があり難しく感じるかもしれませんが、覚えてしまえば存外簡単です。 

 

 

以下の筋肉を伸ばしていきます。

僧帽筋上部/中部(そうぼうきん)

・後頸部筋群(こうけいぶきんぐん)

・前頸部筋群(ぜんけいぶきんぐん)

・胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)

・肩甲骨周囲筋群(けんこうこつしゅうい)

 

基本的にはこの5つをまずは伸ばしていきます。

 

僧帽筋上部/中部(そうぼうきん)

先ずは下図を見てみましょう。

 

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僧帽筋(そうぼうきん)とは、頭から背骨、肩にかけて広く広がる背中の筋肉です。それぞれ上部と中部、下部線維に分かれており、肩を挙上したり、後ろに引いたり、肩の位置を保持する機能があります。

 

3つの部位ごとにストレッチの方法は異なりますが、今回は上部と中部について解説します。

 


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上図がそのストレッチの様子です。

手で反対の腕を後ろに引っ張ると、肩の筋肉が固定されます。その状態で首を反対に傾けると、首の筋肉と僧帽筋上部が伸びます。

鎖骨から首の筋肉が引っ張られ、肩が伸びてぴんと張っているのが分かると思います。

 

注意するのは首を前に傾けないことです。

真横と、やや後ろに傾けるとより効いているのが実感できます。

 

 

後頸部筋群(こうけいぶきんぐん)

頭の後ろの筋肉です。

以下の様な筋肉が対象です。

・頭半棘筋(とうはんきょくきん)

・頭板状筋(とうばんじょうきん)

僧帽筋上部

・頚/半棘筋(けいきょくきん/はんきょくきん)

 

今回は覚える必要はなありません。筋肉が細かすぎるのと、ひとつの動作でざっくり伸ばすことが可能なためです。

筋肉についてはこちらに乗っていますので、興味があれば見てみて下さい。

 

 

www.medicalview.co.jp

 

 

方法としては、両手で頭の後ろを押さえ、前に倒します。

 


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首や肩、背中の筋肉が十分に伸びるよう、姿勢を正してゆっくり行います。

 

押さえるのは頭のやや上で、手のひらで前にゆっくり倒すと良いです。

 

 

前頸部筋群(ぜんけいぶきんぐん)

首の前にある筋肉群を伸ばしていきます。

・広頚筋(こうけいきん)

・顎舌骨/二腹筋(がくぜっこつ/にふくきん)

・胸骨舌骨筋(きょうこつぜっこつきん)

・斜角筋群(しゃかくきんぐん)

・胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)

 

こちらも後頚部と同様で覚える必要はありません。

 

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少しみづらいですが、図をのせました。

参考までに。

 

方法としては、両手の人差し指と中指を合わせ、顎先を下から上に押し上げます。その際に自分でも顎先を上げると、筋肉が伸びるのが実感できると思います。

 


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胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)

一つ前の「前頸部筋群」にもあった筋肉です。

この筋肉は首を左右に向ける作用もあり、首にある大きな筋肉の一つです。

 

まず肩を反対の手で後ろに押します。その際に、押す手を肩と同じ高さに水平に上げると力が入りやすいです。

その状態で首を反対側に傾けると、胸鎖乳突筋を中心に首の横にある筋肉群が伸びるわけです。

 


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こちらも頭を少し後ろに傾けるとよりよいです。

個人的には、首の凝りには一番効果があると思っています。

 

 

肩甲骨周囲筋群(けんこうこつしゅうい)

首のみならず、肩や腕のストレッチも重要です。

筋肉は全身に400個近くあり、それらが複合的に関わっているためです。

 

そのため前の筋肉とちがい、幾つかのストレッチを紹介します。

 

以下の筋肉を伸ばしていきます。

・肩甲挙筋(けんこうきょきん)

上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)

・棘上筋(きょくじょうきん)

・棘下筋(きょくかきん)

 

 

肩甲挙筋(けんこうきょきん)

僧帽筋の図にもあった筋肉です。

肩を上げる働きがあります。

 

右の肩甲挙筋を伸ばす方法を解説します。

左手で頭の右側をつかみ、左に傾けるだけです。

 


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注意点としては、頭を少し後ろに傾けるとよいのと、右手を後ろに回すとより伸ばしやすいことです。

 

 

上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)

何故腕なのかと思うかもしれませんが、腕と肩、首はつながっています。腰や足ですら、上半身に影響がでるという考えもあるほどです。

 

伸ばし方は簡単で、昔体育でやったことがあると思います。

 

腕を上げ、頭の後ろに持っていきます。

反対の手で肘をつかみ、左に引くだけです。

 


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棘上筋(きょくじょうきん)

肩甲骨の上にある筋肉です。

こちらも知っている人は多いと思います。

 

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上腕三頭筋の上下逆で、今後は腕を後ろに回し、反対に引っ張るだけです。

 

注意点としては、首を少し前に倒すと棘上筋が伸びやすいです。

 


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棘下筋(きょくかきん)

肩甲骨の下についている筋肉で、先程の棘上筋と対になります。

こちらもやったことがある方は多いはずです。

 

伸ばし方は腕を前に水平に上げ、肘を曲げます。

反対の手でその肘をつかみ腕と反対側に、水平に引き寄せます。

 

その際に首を少し反対に、後ろにかたむけると伸ばしやすいです。

 


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少し長い記事になりました。

しかし覚えてしまえばとても簡単です。

 

首を前と後ろ、横に倒す。

腕を後ろに回し、上と下で引っ張る。

腕を前で引っ張る。

 

これだけです。

 

しかしこれを2-3回、20-3-秒かけて、風呂上りに毎日行うと、首や肩の筋肉が柔らかくなってきます。人によっては一月、症状のある方は数か月で変化に気が付くと思います。

 

症状がなくても生活の質が上がりますので、導入してみて下さい。

 

似たような内容は書籍やYoutubeでも多数発信されているので、参考にして自分の方法を確立するとよいでしょう。

 

参考までにある程度読みやすい、見やすい本や動画を貼っておきます。

 

 

【肩甲骨ストレッチ】ガチガチに固まった肩甲骨を開放する「肩甲骨ストレッチ」【大分市 腰痛治療家 GENRYU ( 安部元隆 )】 - YouTube

 

【3分】肩甲骨を制すものはダイエットを制す!!簡単肩甲骨はがしストレッチ【猫背改善】 - YouTube

 

ではまた

頭痛01 頭痛の治療と対策

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頭痛に関する記事の続きとなります。

前回の記事で原因と分類について書いているので、そちらも併せてご参照ください。

 

 

khachi.hatenablog.com

 

今回は頭痛の治療についての記事になります。

 

 

 

前回挙げた頭痛に対する治療薬をまとめます。

 ・片頭痛

 ・筋緊張型頭痛

 ・不定愁訴としての頭痛

 

 

片頭痛

簡単に、頭痛が起きる原因についてわかっていることを記載します。

 

脳神経である三叉神経(さんさしんけい)血管系が活性化、神経原性の炎症が引き起こされることが頭痛の原因であると考えられています。

 

その過程で、セロトニン、カルシウム遺伝子関連ペプチド(Calcitonin gene-related peptide ; CGRP)や、サブスタンスP、neurokininA等の神経伝達物質が血管を拡張させると言われています。

 

血管の拡張により周囲に炎症が発生、神経を伝って刺激が中枢に伝達され、頭痛や嘔気等様々な症状が拡散することが分かっています。

 

詳しくは以下のPDFを見てみて下さい。

 

臨床神経「片頭痛の病態に関する最新の知見2020」

https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/060010020.pdf

 

 

片頭痛の予防薬

予防薬は発作自体の頻度を下げる薬です。

以下のようなものが現在使用が可能です。

 ・カルシウム拮抗薬(ロメリジン等)

 ・β遮断薬(プロプラノロール等)

 ・抗うつ薬(アミトリプチン等)

 ・抗てんかん薬(バルプロ酸

 ・ビタミンB12

 ・ロイコトリエン拮抗薬

  ・抗セロトニン

 ・ACE/ARB阻害薬

 

上4つは頻用される薬剤です。

カルシウム拮抗薬、β遮断薬、ACE/ARB阻害薬は高血圧症(や頻脈)に使用される薬剤です。

 

特にカルシウム拮抗薬は良く使用される予防薬で、前述の頭痛の機序にもCGRPが関わっていることから予防効果が期待されます。

 

抗うつ薬、抗てんかん薬による予防効果は臨床的に実証されているものの、その機序は不明です。前述のCGRP関連ではないかと言われています。

 

また、片頭痛を誘発する食材や習慣を避けることも重要です。

・チョコレート

・加工肉

・赤ワイン

・強い光や音、におい

・睡眠不足と過眠

 

 

発作時の治療薬

・トリプタン製剤

・鎮痛薬

漢方薬 

  呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

  黄連解熱湯(おうれんげねつとう)

  三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)

  抑肝散(よくかんさん)

  逍遥散(しょうようさん)

  五苓散(ごれいさん)

  桂枝人参湯(けいしにんじんとう)

 

トリプタン製剤

日本では五種類の薬剤が使用可能です。

簡単に説明すると、薬の効果発現速度や持続時間が各薬剤で異なります。何故か合う合わないもあるため、幾つか試す必要があります。

 

このサイトが比較的まとまっていたため、御参照下さい。

 

www.ne.jp

 

基本的に頭痛が始まった直後に使用し、それ以上頭痛を悪くしないという効果があります。

 

 

鎮痛薬

痛みに対して、ロキソプロフェンやアセトアミノフェン等を使用します。

 いわゆる対処療法です。

 

 

漢方薬

予防薬としても効果がありますが、発作時に使用することも多いです。

 

茱萸湯(ごしゅゆとう)

片頭痛に対する第一選択、胃に水分が停滞し冷え(寒飲;かんいん)頭痛が生じる症例に。

繰り返す頭痛やそれに伴う嘔吐、体の緊張に使用

体力が低下して足が冷える方に適応あり。

逆に体に熱がこもる方にはつかえない(裏熱;りねつ)。

 

五苓散との併用や、トリプタンとの併用で他界頭痛軽減効果の報告あり。

五苓散は水が溜まる(水毒)方で、嘔吐や下痢を伴う頭痛に。

 

 

黄連解熱湯(おうれんげねつとう)

三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)

頭に熱がこもる、充血を伴うような症例に使用。

体力中等度、のぼせやいらいらのある症例に。

 

 

抑肝散(よくかんさん)

いらいらが強く、歯ぎしりをしたり、舌を出しにくいような症例に。

 

 

逍遥散(しょうようさん)

訴えの多く定まらない頭痛に使用。

冷えやのぼせを訴える方に適応がある。

 

 

桂枝人参湯(けいしにんじんとう)

体力が低く胃腸の弱い方向け。

 

 

筋緊張型頭痛

疼痛時の治療

漫然と頭痛やだるさ、肩こり等を訴えているため、発作というものは少ないです。頭痛を普段より強く感じることはあるため、治療の開始はいつでも良いでしょう。

 

漢方薬

  葛根湯(かっこんとう)

  釣藤散(ちょうとうさん)

  抑肝散(よくかんさん)

・鎮痛薬

・筋弛緩薬

抗不安薬

 

漢方薬

葛根湯(かっこんとう)

筋緊張型頭痛に第一に使用される。

実証(≒体力がある)の方に有効で、虚証の方には桂皮加葛根湯を使用。

慢性的な肩こりや頭痛、寝違えた際等にも

 

 

釣藤散(ちょうとうさん)

体力がある方の頭痛に使用される。

ストレスが強く(肝陽上亢)、のぼせや耳鳴り、不眠を伴う方に。

 

心窩部のつかえや食欲不振がある場合にも適応がある。朝に強く、日中緩和されるような方に良い。

 

 

抑肝散(よくかんさん)

ストレス、いらいらのある方に。

嘔気があれば抑肝散加陳皮半夏等も。

 

 

鎮痛薬、筋弛緩薬、抗不安薬

ロキソニン

・エペリゾン

エチゾラム

 

上記の様な薬剤が使用されることがあります。

しかしいずれも対処療法にすぎず、副作用も懸念されるためあまり推奨されません。

 

筋弛緩薬は緊張が強い筋肉を強制的に弛緩させるもので、ふらつきやだるさ、めまい等を誘発することがあります。

 

抗不安薬はいわゆる「鎮静薬」であり、精神的な緊張を弛緩させることで効果を発揮します。しかし上記筋弛緩薬同様副作用の懸念があります。特にだるさや意欲の減退、中毒性には問題があり、常用するとやめられなくなる方もいる程です。

 

 

予防方法

基本的には生活習慣の悪化から肩や首の筋緊張が亢進しているために起こります。予防には運動習慣やストレッチを中心とした生活指導が必須です。

詳細は前回の記事をご参照下さい。

 

 

不定愁訴としての頭痛

今までの記事で既に治療方法は登場しています。

筋緊張型頭痛と同様に生活指導を導入し、逍遥散(しょうようさん)を中心にいらいらや不眠等に応じて漢方薬を使い分けることが有効です。

 

基本的に精神的な要素が過分にありますが、抗不安薬睡眠薬焼け石に水であることが多いです。常用しているとやめられず、次第に活気もなくなっていくため注意が必要です。

 

食事療法

また、上記頭痛全般に使えるのが食事療法です。

頭痛時に効果があるものを挙げていきます。

・アーモンド

・ヨーグルト

胡麻(ごま)

・紅茶

ハーブティー

・外感性頭痛に対する食材

 風熱

 風湿

 風寒

 

 

アーモンド

 マグネシウムによる血管収縮/拡張の調節が期待されています。片頭痛に対する予防効果も一部報告があります。

 

www.webmd.com

 

動脈硬化に対する効果もありますが、過量摂取は尿酸値の上昇含め注意が必要です。

 

こちらは私も常食しているものです。

表面に少し砂糖のコーティングがあり、紅茶や珈琲によく合います。 

 

 

ヨーグルト

カルシウム不足腸内環境を改善するためと考えられています。欧州の一部地域ではそういった習慣があるそうです。

 

今後記事にしたいとは思いますが、脂肪分を含まないヨーグルトが流行っています。無論脂肪以外にも多数の栄養素も含まれていますが、乳製品の良い点はその脂肪分にあるということは有名です。

 

過剰な脂肪制限は、果たして健康的なのでしょうか?

 

 

胡麻(ごま)

様々な栄養素が含まれる非常に優れた食品です。ビタミンB群やEが豊富で、エストロゲンのバランスを調節すると言われており、生理時の頭痛や、筋肉の血流が悪い筋緊張型頭痛等に効果が期待されます。

また、前述のマグネシウムも豊富です。

 

以前紹介した、胡麻(ごま)と胡桃(くるみ)を豆乳にいれたホットドリンクは、そういう意味でも有効でしょう。

胡麻も白と黒両方つかうことで、臓器の機能を補う効果が期待できます。

 

 

 

紅茶

紅茶には体を温める「温性」があり、内蔵を温めることで気血の巡りを改善し、頭痛を軽減することが期待できます。

 

またクコの実を入れて疲労回復を、シナモンで内臓から体を温め睡眠を助ける「熱性」も期待できます。

 

 紅茶には苦味があり、苦味には「心;しん」つまり神経を安定させる効果があります。

 

これは推測ですが、紅茶の種類も影響すると思います。ダージリンやそのfirst flash(ファーストフラッシュ)等の若い紅茶には苦味があまりありません。

 

そう考えると、秋摘みであるAutumnal(オータムナル)や、よりコクがあり味わいの深い品種を選ぶとよいのではないでしょうか。

 

個人的にはセイロンが良いと考えています。ミルクティーにしても負けない強い味わいがあり、香りも高いためです。

 

無論、冷たい紅茶ではなく、温かいものを飲むようにしてください。

 

 

この辺りが無難でしょうか。

 

 

ハーブティー

ペパーミントに血管収縮効果があり、ラベンダーには鎮静効果が、ローズマリーは鎮痛薬に使われるほどです。カモミールも同様です。

 

ハブティーの香りには何れも鎮静作用があるともいわれており、取り入れてみるのもいいかもしれません。

 

 

外感性頭痛に対する食材

前回の記事で書いた通り、外の環境が原因で頭痛が生じる場合があります。その際に良いとされる食材を記載します。

 

風熱 冬以外、暑く汗がでてのどが乾く

   せろり、白菜、ゴーヤ、キュウリ、トマト

   リンゴ、ナシ、キウイ、豆腐、緑茶

 

風湿 頭が重い、胸が苦しい、食欲がない等

   雨が降る湿気の多い時期に

   ねぎ、大葉、生姜、みょうが

風寒 寒い時期に

   ねぎ、大葉、生姜、シナモン

 

春夏で暑い時はトマトや豆腐、緑茶が使いやすいです。

 

蒸し暑い時や寒い時は葱、大葉、生姜でしょう。

特に寒い時は、ミルクティーとシナモンも使い勝手が良いです。

 

 

これは個人的な趣味ですが、少し疲れたと思った時はシナモンスティックの臭いを嗅いでいます。ゆっくり深呼吸するとリラックスできます。

 

 

 

慢性的に頭痛がある方は、色々と試して導入してみて下さい。西洋医薬が必要になる場面もありますが、生活習慣に伴うものだと効果が薄く、いつまでも頭痛が無くならない、ということが多いです。

 

日々の習慣を見直し、生活の質を上げたいものです。

 

ではまた

頭痛00 頭痛の種類と原因

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頭痛で悩まされている方は多いです。

 

身近にも慢性的な頭痛を持っている方もいると思いますが、統計学的にもとても多いことが分かっています。西洋医学的には、頭痛は「Common disease」なのです。

 

しかし一部の頭痛を除き、治療は対処療法が基本となる場合が多いです。

 

今回は頭痛についてまとめてみようと思います。 

 

 

頭痛とその分類

頭痛とは、頭部の一部ないし全体に生じる疼痛の総称で、病気や体調に伴い一時的に出現するものから、慢性的に繰り返すもの等様々です。

 

原因も多岐にわたり、国際的な分類である

ICHD-3β(International Classification of Headach Disorders 3nd editionβ)には300種類以上の原が記載されています。

 

www.jhsnet.net

 

大まかに分けると頭痛には一次性と二次性があります。

 

一次性とは、頭痛そのものが原因となるもので、片頭痛等がそれに該当します。

二次性とは、他に原因があり症状として頭痛が生じるもので、脳出血や脳腫瘍等が該当します。

 

頭痛診療の場合、まず二次性を除外する必要があります。理由としては、二次性頭痛の原因を見逃すと病状が悪化する危険性が高いためです。

 

特徴としては、危険な兆候(Red flag signを見ていきます。

 

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図. Evidence-Based Diagnosis in primary care : 150, 2008.

 

こういった特徴がある方は要注意で、採血やCT検査等の必要性があります。

逆に、そうでない方は急ぐ必要はなく、頭痛外来や脳神経内科外来を予約し診療を受けてください。

 

 

疾患の解説

頻度の高い頭痛について簡単に解説します。

片頭痛

・筋緊張型頭痛

不定愁訴としての頭痛

 

二次性頭痛の頻度はそこまで高くないため、明らかに上図の危険な兆候に合致しなければ検査は必要なく、経過を見ることが多いです。

 

 

片頭痛

日本人の8.4%が罹患し、経済損失は2,880億円に上るとのことです。

患者も多く、困っている方が多いということです。

 

勘違いしている方が多いですが、頭の片一方が痛ければ片頭痛というわけではありません。診断基準もあり、一応検査項目もあります。

 

片頭痛には特徴があり、それに合致するのかが重要となります。

簡便に診断する場合、「POUNDing」といわれるスケールを使用します。

 

これは症状や特徴の頭文字です。

 Pulsating 拍動性

 hOurs   持続時間 4-72時間

 Unilateral 片側性

 Nausea  嘔気

 Disabling 日常生活に支障

 

各1点で加点し、3点以上ではリスクが高く、2点以下の4倍近いと考えられています。

 

詳しく知りたい方は以下をご参照ください。

 

www.jhsnet.net

 

 

しかし注意事項が二つあります。

一つ目は片頭痛を疑う所見は他にも多数あるということです。

 

以下の様な特徴がある場合は疑われます。

 ・体動による症状の増悪

 ・前兆症状

 ・感覚過敏

 

体を動かすと頭痛や嘔気が強くなるため、横になっていたいと訴える方が多いです。

 

前兆としては視覚、感覚、言語の異常がでることがあります。視覚異常では閃輝暗点(せんきあんてん)が有名で、視野にぎざぎざした幾何学模様が見えることが典型です。

 

感覚異常では手足のしびれや違和感などが、他には抑うつやいらいら、あくび、眠気、肩こり、胃腸の異常等が出ることがあります。

 

感覚過敏としては、光過敏や音過敏が有名です。光が眩しいため暗所を好み、音が煩わしいため部屋を閉め切ることもあります。

 

二つ目は上記の条件に合致しない片頭痛が珍しくないということです。

例えば4割の方で両方に痛みが出たり、3割の方で前兆がなかったり、逆に前兆のみの方もいるなど、診断に苦慮することも多いです。

 

そういった場合は診断的治療を行うことが多いです。

 

 

筋緊張型頭痛

緊張性頭痛ともいわれ、筋肉の緊張が亢進するために生じる頭痛になります。あくまで体感ですが、次項の不定愁訴と合わせると頭痛で困っている方の大部分がこれらに該当します。

 

意識していない方が多いですが、筋肉は毎日労働をしています。

頭は体重の10%、腕は20%ともいわれ、体重50kgの方だとそれぞれ5kg 、10kgに相当します。

 

これらを日々支えているわけですが、それをいたわる事を忘れがちです。そのため疲労が蓄積し、次第に筋肉の緊張が高まっていきます。

またトレーニングの習慣がなければ加齢に伴い筋肉量が減少し、その疲労に耐えられなくなります。

 

それにより肩や頭を引っ張り、頭痛が生じるわけです。高齢者の肩こりや腰の痛みも同じような機序になります。

 

筋緊張型頭痛の特徴としては以下が挙がります。

 ・若年女性

 ・デスクワーク

 ・姿勢が悪い

 ・運動習慣がない

 ・肩がこる

 ・ストレッチをしない

 ・なで肩

 

何れも筋肉の血流が悪くなる原因ばかりです。

また、入浴したりマッサージをすると少し良くなる場合も筋緊張型頭痛の可能性があります。血流が改善されれば一時的に良くなるわけです。しかしそういった介入は体質を変え原因を除いたわけではないため、あくまで一時的なわけです。

 

 

不定愁訴としての頭痛

いわゆる明らかな原因が西洋医学的に説明できないものや、精神的な要素が挙がります。

 

東洋医学的には、何れも大きく分けて二種類の原因が挙がります。

 

一つ目は臓腑や経絡の通りが滞るもので(不通則痛)、二つ目は気血の不足によるものです(不栄則痛)。

 

また漢方では、大きく外感(がいかん)と内傷(ないしょう)に分けて考えます。外感は体外からの原因(外邪:がいじゃ)のことで、内傷は内臓(肝脾胃)のことを指します。

 

外感頭痛は外邪により、内傷頭痛は肝脾胃の失調により発症すると言われます。

 

外邪とは、季節特有の邪気であり、別名を六淫(りくいん)といいます。

 ・風邪(ふうじゃ) 春

 ・暑邪(しょじゃ) 夏

 ・燥邪(そうじゃ) 秋

 ・寒邪(かんじゃ) 冬

 ・湿邪(しつじゃ) 梅雨

 ・熱邪(ねつじゃ) 高温による

 

要は外感頭痛は環境要因により、内傷頭痛は内臓の調子によるものです。

気圧や温熱等は前者で、生活習慣の乱れやストレスは後者に影響します。

 

こうみると、病名がなく保健収載されていないものでも頭痛の原因になるということが分かります。こういったものは検査しても問題がないと言われるわけです。

 

 

今回は長くなったのでここまでにします。

次回は具体的な治療方法や対処療法について記載していきます。

 

ではまた。

 

 

 

 

 

火山の噴火と健康被害

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3月2日、イタリアのエトナ山インドネシアシナブン山が噴火しました。

ここ最近地震と火山の噴火がやや多い印象があります。

 

スマトラ島沖等のインドネシア近郊で地震が起きた後に、東日本大震災が起こったことは有名で、地震と火山活動の連動に関しても指摘があります。

 

日本で最も被害が大きいのは富士山でしょう。

 

富士山が噴火する可能性はあるのか、その際どの様な健康被害が考えうるのか、調べてまとめてみます。

 

 

 

日本の火山と噴火の可能性

2017年時点で、日本には111の活火山が存在します。日本の国土は小さくはないものの、この数は非常に多いです。

 

以外ではありますが、活火山の定義は「過去一万年以内に噴火した火山及び活発なな活動のある火山」とされています。

 

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出典:気象庁「我が国の活火山の分布」

 

富士山の噴火はわかっているだけで17回に上り、地質学的にも多数の痕跡が残っています。最後の噴火は1707年の宝永大噴火で、2週間に渡って断続的に噴火し、農地が灰で覆われ餓死者が続出したとの記録があります。

 

以降も噴気活動は度々見られており、1854年地震後や2000年、2008年、2011年にも地下深部の膨張や地震が確認されているようです。

 

噴火は何れも100年周期であり、300年起きていない現状がある意味では異常なんだそうです。そうなると、今後南海トラフ震源とした地震をきっかけに噴火する可能性はあるとのことです。

 

 

火山噴火による被害予測

想定される被害は以下が挙がります。

 ・溶岩流

 ・火山灰

 ・火山ガス

 ・火砕/土石流

 ・噴石

 

特に身近な上三つについてまとめます。

 

溶岩流

火口の場所や噴火の程度にもよりますが、概ね下図の様な範囲で被害が想定されています。

 

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出典:静岡県「富士山ハザードマップ

 

ここには日本物流の大動脈である東名高速や、東海道新幹線も含まれるため、運輸や交通は大打撃を受けるでしょう。

 

火山灰

噴火により巻き上げられた灰が広範囲に降り注ぐことが予想されています。その範囲は非常に広く、特に南関東全体で被害が想定されます。

 

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出典:静岡県「富士山ハザードマップ

 

しかもこれは1701年の宝永大噴火の被害予想であり、今後富士山が噴火した場合はより広範囲で降灰量も多いとの予想が大多数です。

 

前回の宝永大噴火では、49日間降り注いだとと記録されており、その間被害が出続けることになります。降灰により飛行機も飛ばず、陸のみならず空の物流も滞るでしょう。

 

 

火山ガス

マグマに溶けていたガスが気体となり噴き出したものです。殆どは水蒸気ですが、二酸化硫黄や硫化水素、塩化水素、二酸化炭素等が窪地や風通しの悪い地形にたまることがあります。

 

離れた地域であればそこまで神経質になる必要はありませんが、ある程度離れた場所でも健康被害が報告されています。

 

1986年アフリカのカメルーンで噴火後の火山ガスにより1734名が死亡、7000頭の家畜が死亡する事故が起きています。これは近隣の湖に流れた溶岩からガスを漏出したためです。数km離れた場所でも被害が報告されており、油断は禁物です。

 

 

火山噴火による健康被害と対策

今回の記事の本題です。

具体的にどの様な対策が必要なのか記載します。

是非参考にしてみて下さい。

 

主な被害部位とその対策としては以下が挙がります。

 ・肺の保護

 ・眼の保護

 ・皮膚の保護

 

肺の保護

火山灰の吸引による健康被害は、1980年のアメリセントヘレナ山噴火の報告が詳しいです。日本でも三宅島噴火時の健康被害についていくつか報告があります。

 

それによると、太い気管支へのアレルギー反応(気管支喘息等)が多いものの、細い気管支にも到達し間質性肺炎を引き起こすことが報告されています。

 

つまり、火山灰が降っている間はマスクで吸入量を減らす必要があるのです。先も記載した通り、宝永大噴火の際は実に49日も降灰が見られたことから、その間十分な防御が必要となります。

 

また、通常の不織布マスクでは効果は非常に薄いです。火山灰の大きさは最低で0.1μmともいわれており、花粉が30μmであることを考えると非常に小さいことが分かります。そのため不織布マスクではフィルター機能が不足しているのです。

 

また密着度も問題となります。今回のコロナ騒動でも言われていますが、マスク着用の際隙間が空いていると効果が激減するため、密着させる必要があります。

 

これは火山灰でも同様で、ある程度顔に密着するタイプの防塵マスクが必要となります。

 

 

私はシゲマツの防塵防毒マスクを準備しています。吸引管を硫化水素用とし、フィルターもつけています。

 

 

 

眼の保護

火山灰が眼に入るとアレルギー反応により結膜炎を引き起こします。それによるかゆみで眼をこすると、火山灰により角膜が傷つき、最悪剥離することがあります。

 

特にコンタクトレンズを装着している方は要注意で、コンタクトレンズと角膜の間に火山灰が入ると大変なことになります。噴火時は眼鏡を装着することをお勧めします。

 

また、ゴーグルは必要です。顔にフィットするものがいいでしょう。

 

 

 

皮膚の保護

特に皮膚が弱い、皮膚疾患がる、アレルギー体質の方は注意ですが、皮膚に火山灰が付着しアレルギー反応を起こすことがあります。かゆみや湿疹が出現し、掻いてしまうと悪化することが予想されます。

 

レインコートやポンチョ、笠等が必要で、顔や首、手足も外気にさらさないように防御するのが良いと思います。なにより粒子が細かいため、すり抜けた粒子をぬぐえるウエットティッシュがあると良いと考えています。

 

 

 

南海トラフ地震同様、いつ来てもおかしくないと言われて早数十年ですが、かといって地震大国、自然災害大国である以上、備えあれば患いなしでしょう。

 

災害セットを作り、部屋に備えることをお勧めいたします。

 

ではまた

 

 

睡眠02 不眠症

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一生の3割は布団の中で眠っています。

男性の平均寿命を84歳とすると、実に28年に相当します。

 

しかし以前の記事でも書きましたが、現代人、特に日本人は睡眠時間が短くなる傾向にあります。

 

khachi.hatenablog.com

 

睡眠不足によるの健康被害は表面化しづらく、特に見逃されがちです。

 

今回は不眠症についてまとめてみます。

 

 

 

 

不眠症の定義

西洋医学的には以下の四つに分類されます。

入眠障害 寝つきが悪い

中途覚醒 途中で目が覚める

早朝覚醒 朝早くに眼が覚め以降眠れない

・熟眠障害 熟眠感がない

 

西洋医薬では、持続時間や効果発現速度の違う薬を組み合わせて使用します。しかし原因を治療しているわけではなく、薬の影響で翌日熟眠感がなく疲労感が残る人も多いようです。

 

東洋医学的には、五行の乱れで起きる睡眠障害であると定義されます。

五行とは体を構成する五つの重要な臓器をさし、心肺肝脾腎をに相当します。

 

睡眠には主に「心(しん)」が関わりますが、他の肝、脾、腎も影響を与えています。

 

は血の循環により精神=神(しん)の安定に関わっています。また血の不足により心に障害が起きるとイライラするような熱症状が出現し眠れなくなります。

 

は血の貯蔵を担い、気血のバランスを調節し、血を浄化する作用を有します。これが滞ると不安になり、胸が苦しいといった症状が出現し眠れなくなります。

 

栄養の吸収や胃腸の働きを調節します。機能が低下すると血が減り、心や肝に悪影響がでます。暴飲暴食やストレスの影響を受けやすく、胃に食物が溜まる「食滞(しょくたい)」がおきるためげっぷが出たり胃がむかむかします。

 

水分の調節を行っているため、機能が低下し水分が不足すると腎陰虚(じんいんきょ)に陥ります。これは心や肝の機能を低下させてしまいます。高齢者ではこれが原因となる事が多いです。

 

 

治療方法

治療方法は以下が挙がります。

・西洋医薬

漢方薬

・予防

 

 

西洋医薬

いわゆる睡眠薬です。

作用時間が短く立ち上がりが早い睡眠導入薬や、作用時間が長く朝まで効果が持続する長時間作用型等があります。

 

しかし先にも申し上げた通り、あくまで対処療法であり、常用はお勧めしません。高血圧症があるのに暴飲暴食をしながら薬を飲んでいるようなものです。

 

原因は他にあり、除けない場合にはやむを得ないこともあります。しかし長期服用による副作用は有名で、特に認知症の報告があります。

 

これはベンゾジアゼピン系での報告が多く、非ベンゾジアゼピン系も開発されているため全てではありません。しかしそう非ベンゾジアゼピン系は新しい薬剤ので、長期服用に関する報告はまだありません。

 

簡単に非ベンゾ系睡眠薬を御紹介します。

アモバン 

 作用 GABAAR増強

 超短時間作用型で残りにくい

 

マイスリー 

 作用 GABAAR増強

 超短時間作用型で残りにくい

 

ベルソムラ(スボレキサント)

 作用 オレキシン受容体拮抗薬

 超短時間作用型だが中途覚醒にも効果があり

 

ロゼレム(ラメルテオン)

 作用 メラトニン受容体作動薬

 睡眠と覚醒のリズムを調節

 

デエビゴ(レンボレキサント)

 作用 オレキシン受容体拮抗薬

 スボレキサントと同様に睡眠維持効果あり

 高齢者でより安全との報告

 

 

漢方薬

漢方薬には直接睡眠を誘発しません。

不眠の原因を解消し、自然な眠りを促す効果があります。そのため他の分野では原因に対する治療的な西洋医学より、この分野では東洋医学の方が原因に対する治療的な役割があります。

 

また睡眠の原因を除くのみならず、付随する冷えや疲れ、めまいなどにも効果があります。効果が弱い場合もありますが、睡眠薬を減量することも期待できますのでお勧めです。

 

漢方薬の選択は、患者の症状=症(しょう)によって使い分けます。

簡単に説明すると、実証とは、体力があり気や血が多く、虚証とはその逆です。

 

実証 

気血水が過剰で滞り、基本的に体力のある方

 黄連解毒湯 のぼせ気味、いらいら

 柴胡加竜骨牡蛎湯 不安が強く、便秘あり

 三黄瀉心湯 みぞおちの使え、更年期

 

中間~虚証 

気血水が不足し、体力のない方

 加味帰脾湯 心身の疲れ、血色が悪い

 加味逍遥散 女性、のぼせや肩こり

       不安、更年期

 酸棗仁湯 心身の疲れ、精神不安定

 抑肝散 子供の夜泣き 高ぶり

     起こりやすい、イライラ

 柴胡桂枝湯乾姜湯 冷え性、貧血、神経過敏

 

これらもほんの一部です。

各証によっては他にも様々な漢方薬が選択されます。そういう意味ではいわゆるordermade treatmentであり、非常に合理的ですね。

 

 

予防

不眠の原因を探し、環境調節や生活習慣の改善を行います。以下にざっくりと、不眠の原因になりうるものを列挙します。

 

 ・運動不足

 ・ストレッチ不足 基礎代謝の低下

 ・入浴習慣がない シャワーのみ

 ・遅寝遅起 睡眠リズムの乱れ

 ・環境要因 気温や音響、照明

 ・夜遅くのカフェイン摂取、冷たい水分の摂取 

 ・長時間モニターを見る行為 スマホ、PC

 ・寝具の問題 枕や寝具の硬さ

 ・ストレス

 ・薬剤

 ・飲酒や過食

 

まとめると、運動習慣をつけて健康的な食事を心がけ、入浴後の十分なストレッチを行うことです。部屋や寝具を工夫し、快適な睡眠環境を整えるようにして下さい。

 

入浴後は部屋を暗くし蛍光灯や明るく光量の多いLEDを控え、室内灯にするとよいでしょう。風呂上りでも冷たい飲食をさけ、白湯や豆乳を飲むことをお勧めします。

 

パソコンやスマホは入浴後極力見ないようにし、食後の飲酒も控える必要があります。寝具に関してはいずれまた記事にします。

 

 

人生の3割を如何に快適に過ごすか、もっと注意を払ってもよいと思います。その工夫が残りの7割にいい影響がでるのは言うまでもありません。

 

健全な精神は健全な肉体に宿る、です。

良い睡眠を。

 

ではまた

一酸化炭素中毒のその後

一酸化炭素中毒に関する中間報告になります。

 

以前の記事にも書いた通り一酸化炭素中毒で入院し、退院後も症状が残存しています。その経過を書こうと思います。

 

以前の記事もご参照下さい。

 

khachi.hatenablog.com

 

 

khachi.hatenablog.com

 

 

 

 

経過

まず退院後、頻回の嘔吐で胃腸が弱り食事が摂れませんでした。体力もごっそり持っていかれたようで、気力もなく疲労感が常にありました。

また、倦怠感が持続し常に風邪を引いたような状態が持続していました。

 

釣藤散を3包分3で5日、酸素管による吸引を10日程継続しました。時間経過もあり、胃腸は平時の6割程度まで改善したものの、依然として体調不良が持続しています。

 

特に気にかかったのが、体力の低下と風邪を引いたような倦怠感です。徐々にですが胃腸の調子もよくなり、普通の食事がある程度食べれるようにはなったものの、少し動くだけで怠く休みたいような倦怠感がありました。

 

寒気も強く、四肢先端や三首(手首、足首、頸部)、腰背部が冷えてうまく寝付けませんでした。睡眠も浅く時間も短くなると、より体力が戻りません。

 

 

評価

低酸素血症による多臓器障害があったと考えられます。COHb 17%は中等度以上の濃度であり、後遺症や遅発性中枢神経障害がでてもおかしくない状況でした。酸素管による吸引で症状が軽減されるため、そのことも上記臓器障害を疑わせます。

 

漠然とした倦怠感や疲労感はこれが原因と考えられます。寒気は肝機能低下や循環不全による、熱産生低下や循環不全(気滞/瘀血?)の状態にあったのではないでしょうか。

 

上記症状は、東洋医学でいう五行(肝心肺脾腎)のほぼ全てで認められます。そういった観点からも、やはり全身のあらゆる部位に障害が残っていたのでしょう。

 

 

対策

とった対策は三つになります。

・食事療法

・衣服や布団の工夫

漢方薬

・Osteopathy

 

食事療法

糖質や脂質を避け、冷たいものを水も含め一切とりませんでした。

 

以前の記事でも書きましたが、朝起き掛けに甘酒を飲むようにしました。胃腸を温め活性化し、糖質の補充、乳酸菌により腸環境を整えました。

 

加えて、朝夕で豆乳に黒胡麻と胡桃を入れて飲んでいます。いずれも腎を補い、気血の滞りを改善する効果があります。

 

 

衣服や布団の工夫

ひたすらに冷えるため、皮膚の露出を減らし、湯たんぽを使用しました。

ネックウォーマーや手袋、靴下も併用しました。

 

 

特にYetinaの靴下は非常にお勧めです。

丈も長く、裏が起毛していて冬の室内には必須です。

 

それでも冷えを感じていたことからは、熱産生自体が低下していた可能性が強いです。こういった場合は外から温めるだけでは不十分で、中から温める必要があり、基本的には食事療法が必須です。

 

また、腰背部の冷えが強いので、電気毛布を使用しました。弱で終夜つけっぱなしにし、やや冷えによる寝付きづらさが改善した印象があります。

 

 

漢方薬

漢方薬として「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」を煎じ薬で始めました。

漢方医の診察を受け、以前紹介した日本堂で相談し処方してもらいました。

 

当漢方は、体力が低下し胃腸が弱く、四肢に冷えを感じるが汗をかかない方に使います。体を内部から温め、全身の、特に四肢末端の血流を良くする効果があります。

 

日に二度、朝夕で200ml程度内服しています。

やや生薬独特の臭いがありますが、飲み口は甘めで飲みやすいです。

 

飲み始めて2、3日で効果を感じ始めました。

靴下は脱げませんでしたが、湯たんぽなしでも冷えを感じなくなりました。また、就寝中も寒気は薄れ、数時間まとまって眠れるようになりました。

 

余談ですが、当漢方は慢性片頭痛や月経痛にも適応があります。

 

 

Osteopathy

整体ともカイロプラクティックとも異なります。

 

簡単に解説すると、解剖学的な構造を整える治療方法です。人は外的要因や精神的要因により様々な反応が各臓器に現れます。それを外から整えるといった治療方法です。

 

1,800年代のアメリカで発症した治療方法で、日本でも施術をしている先生は何人かいます。整体やストレッチとは異なり立派な治療方法になり、その効果は実感済みです。

こちらについてもいずれ記事にします。

 

www.osteopathy.co.jp

 

施術をした先生によれば、腎臓以外の全身に影響影響が及んでいたとのことでした。あらゆる部位が滞り、流れが悪くなっていたとのことです。部位としては脳室や肺、肝臓(門脈)、脾臓が主に施術対象になったとのことです。

 

これは前述の、低酸素血症による多臓器障害を支持するもので、漢方医の先生とも意見が一致します。しかし、腎臓のみが軽い障害で済んでいるとのことで、豆乳による効果と考えられます。

 

施術直後は全身に力が入りませんでした。白湯を飲み、30分ほど休憩して初めて歩けるようになりましたが、生まれたての小鹿のようでした。。帰宅してからはそのまま就寝し、ぐっすりでした。

 

翌日起床時には大きな変化がありました。倦怠感が和らぎ、風邪の様な症状が半減していました。冷えも同様で、3割程度改善しました。

 

月一度は通い、暫く施術を受ける予定です。

 

色々な物を組み合わせ、外と中から改善するほかありません。

西洋医学では、こうはいきませんね。こういうところに東洋医学の妙味があります。

 

 

ではまた。

 

花粉症について

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もはや日本人の国民病ともいっていい疾患

花粉症です。

 

通年花粉は飛んでいますが、特に春は症状が出る人が多いです。今回は花粉症について、その対策も含め記事にします。

 

 

 

花粉症とは

抗原(こうげん)が対外から侵入し、生体防御のためにアレルギー反応が起こります。その防御反応による諸症状ををまとめて花粉症(アレルギー性鼻炎/結膜炎)と呼んでいます。

 

つまるところ普通の防御反応なんですね。

しかし敵が多かったり反応が強いと症状に困るわけです。

 

アレルギー反応には四つの型があり、Ⅰ~Ⅳ型に分けられます。花粉症はⅠ型に分類され、抗原の侵入から5分程度で反応が起こる即時型と言われています。

 

アトピー性皮膚炎や気管支喘息も同じ分類に入り、肥満細胞やIgE、ヒスタミンといったどこかで聞いたことがあるような用語も関連しています。

 

分かりやすく勉強してみたい方は、アニメ「はたらく細胞」一期の第五話「スギ花粉アレルギー」を見るとよいでしょう。

 

 

花粉症の原因

言わずもがな、花粉です。

 

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出典:東京都環境局「PM2.5対策」

 

上図の様に頭髪より小さいのが分かります。

何となくの対策では不十分なことは想像に難くないでしょう。

 

花粉粒子は非常に小さく軽いため、200km先でも到達します。そのため、近くに木がなくとも広範囲に飛散するため、多くの方が苦しむこととなります。

 

近年患者数は増加しており、環境省の統計では東京都の48.8%が罹患しているそうです。平成10年と平成20年の10年間で1.5倍に増加したとのことです。

 

 花粉症環境保護マニュアル「患者数の推移」

 https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual/1_chpt1.pdf

 

増えている原因は二つあります。

一つ目は伐採割合が減っていることです。昭和40年頃から資材用に植林されたものの、需要が減りほったらかしになっているためです。

 

二つ目は樹齢の高い木が増えていることです。これは伐採率低下による結果ですが、樹齢が高い樹木ほど花粉量が増え、樹高(じゅこう)が高い程遠くに飛散しやすいと言われています。

 

 

 

症状

言わずもがなですが、ひとつだけ。

非特異的な症状として悪寒や倦怠感があります。

この症状が強いと生活の質が下がります。

 

冷えを訴える方もおり、体調不良が花粉症によると気が付かない例も多数あります。

 

 

対策

以下の様な対策が考えられます。

 ・マスク

 ・眼鏡と服装等

 ・西洋医薬

 ・漢方

 ・薬膳

 ・寄付

 

 

マスク

マスクの装用で花粉量を10-30%に減らすことが確認されています。特に不織布マスクは線維が細く密で、花粉の捕獲量が多いです。

 

また、内部にインナーマスクを挿入すると数%まで花粉量を減らす効果が確認されていますのでおすすめです。

 

 

 

眼鏡と服装等

普通の眼鏡でも65%程度の暴露量減少が確認されています。この時期に伊達メガネを装用することも対策になるということです。

 

服装では、ウールに花粉が付きやすいため、避けるのが無難でしょう。

 

余談ですが、家に入る際に払ったり、空気清浄機を使用することがどの程度有効か不鮮明です。上図でも示しましたが、あの小ささの粒子が多数付着しています。恐らく焼け石に水でしょう。

 

外套は玄関に置くことや、帰宅後の洗顔や入浴は有効と考えます。

 

 

西洋医薬

基本的には内服や点鼻の抗ヒスタミン薬が中心となります。

最近は舌下錠による減感作療法や、3週間間隔で投与する皮下注製剤も出ています。

内科医を受診すればだれでも手に入ります。

 

 

漢方

体外から侵入するものを外邪(がいじゃ)と呼び、いわゆるアレルゲンを指します。それに対する抵抗力を衛気(えき)といいます。

 

体内の衛気が不足するとアレルギー症状が現れます。関係する臓器は肺と脾で、何れも気を取り入れて活用する臓器です。

 

東洋医学では症に対して漢方が使用されます。

 

衛益顆粒 衛気を補う 

補中益気湯 肺脾を整える 

健胃顆粒 脾を整え水分代謝の改善 

小青龍湯 中等度の体力で水様性鼻汁に

     辛温薬で結膜炎を悪くすることがある

麻黄附子細辛湯 鼻水が少ない、小青竜湯で無効

        体力のない方や高齢者

        手足の冷え

 

簡単に分類すると、

運動不足や生活の乱れあり

外気温に左右されやすい

 →衛益顆粒によるバリア機能強化

 

体力があるが胃腸が弱い

 →健胃顆粒

 

体力がなく鼻汁が強い

 →小青竜

 

となります。

また、ツムラ等の調整顆粒でもよいですが可能なら煎じ薬がお勧めです。

 

漢方の専門医によっては、煎じ薬でなければ意味がないと豪語する先生もいる程で、効果は大きく異なります。

 

しかし生薬を自分で煮出す手間があることや、においが強いため鍋や容器に臭いが移ること、費用が少し割高になる事が難点ではあります。

 

興味がある方は日本堂の店舗で相談してみて下さい。伊勢丹等に入っていることが多いです。

 

www.nihondo-shop.com

 

一応ネットでも調整顆粒は一部が購入可能です。

 

 

 

薬膳

いわゆる食事療法です。

ただ食材を食べるだけで変わるはずがないと考える方が多いですが、習慣化するとその変化に驚くと思います。詳しくはいずれ記事にします。

 

今回は肺と脾に作用し花粉症対策になる食材を簡単に紹介します。

 

気を補う食材 穀物や芋、豆、キノコ類、南瓜、キャベツ

水毒症に   小豆、ハト麦、もろこし、冬瓜

       逆に甘いものやお酒、

       濃い味付け、脂質の多いものは

       水をためる性質あり注意

肺を補う 薬味やスパイス、大根、白菜、ゴボウ

脾を補う 薬味やスパイス系、白胡麻、蓮根

腎を補う 黒胡麻、クコの実、胡桃、ニラ、栗

滞りを改善し代謝促進 紫蘇

 

以前の記事で御紹介した豆乳を使ったものが腎を補う食材の宝庫であることが分かると思います。

詳しくは以前の記事をご参照下さい。

 

khachi.hatenablog.com

 

最近はこれに胡麻を混ぜて飲んでいます。

 

漢方の先生を受診した際にも、一酸化炭素中毒で他の臓器は軽い障害が残っているが、腎臓だけ改善傾向にあると言われ驚きました。

毎日2回飲み、習慣化すると診察でもわかるような変化が出るという証拠ではないでしょうか。

 

紫蘇には、気血が溜まり滞っている「気滞・瘀血(きたい・おけつ)」に効果があります。鼻閉等には特に有効です。

また、ポリフェノールの一つであるルテオリンには肥満細胞の強力な安定化による抗アレルギー効果が報告されています。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

寄付

少し変化球ですが、寄付という手があります。

東京都農林水産省振興財団が行っている花粉対策事業に、今ある杉を花粉の出づらいものに置き換えるという事業があります。

 

そもそもの原因が無計画な昭和期の植林ですから、国を挙げて対策に乗り出してほしいものです。しかし予算のことや製薬会社の意向もあり、大きくは動けないようで。

 

詳しい内容は以下にリンクを貼っておくので御参照下さい。

moridukuri.tokyo

 

 

本日の内容は以上となります。

動脈硬化等もそうですが、花粉症も日々の習慣により緩和が可能です。

色々と取り入れてみては如何でしょうか。

 

それでは