運動不足は不健康ですが、筋肉が少ないことが不健康だとはあまり言われません。
スポーツをしていない場合や近年の筋トレブームでもなければ、筋肉を鍛える人は限られます。
しかし近年、筋肉量の減少が病気につながる事が明らかになってきました。
また運動習慣がなく筋肉量が加齢に伴い減少する人が多く問題となっています。
今回はやや長期的な目線にたっての記事となります。
1.フレイルとサルコペニア
そもそも何故筋肉量が少ないと問題なのか。
筋肉のあるなしは見栄えは変われど、個人の趣味の範囲内だと思う人もいるようです。
また若い方は問題意識が現状ないため、そのまま歳をとり後から問題になる事が多いのです。
しかし加齢に伴い様々な病気に罹るにあたり、筋肉量との関連性が次第に示唆されるようになってきました。
筋肉量の減少により体重が減少した状態を「Sarcopenia ;サルコペニア」といい、それにより運動機能が低下した状態を「Frail syndrome;フレイル」といいます。
診断基準としては、
フレイルではFriedらの基準が、
サルコペニアではAWGS2019が用いられます。
〇Friedらの基準
以下の内3項目以上該当でフレイル
1-2項目でプレフレイル
・体重減少 半年で2-3kgの減少
・日常生活活動量の減少 運動習慣の頻度
・歩行速度の減弱 5m歩行で1m/s未満
・握力低下 男性26㎏未満、女性18㎏未満
〇AWGD2019 の基準
診断基準の一部を抜粋したものになります。
太ももの太さを測り、握力の低下や、
椅子からの立ち上がり試験で陽性
であれば疑われます。
フレイルにより様々な病気が誘発されることが分かっており、
以下の様な報告が挙がっています。
・転倒と骨折
・末梢循環不全や冷え性
・動脈硬化の進行
・心疾患(心不全等)の進行
・認知症
転倒と骨折
筋肉量の低下により運動機能が下がると、転倒とそれによる骨折の危険性が高まります。
特に歳とれば骨折が引き金で寝たきりになる方もいるため、大きな問題となっています。
末梢循環不全や冷え性
高齢者は勿論ですが、四肢の冷えは生活の質を大きく低下させます。
それらが様々な症状につながり、病院を受診するも病気ではないといわれ観察する方も多いでしょう。
動脈硬化の進行
未だ詳細は分かっていませんが、酸化ストレスの蓄積や慢性炎症、インスリンの効果が低下(インスリン抵抗性の上昇)することなどが報告されています。
それらにより、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞、認知症等を助長することが指摘され始めています。
そういった原因はある日突然出現するわけではなく、日々の積み重ねであることからも介入が難しいため、受診する際には既に病状が完成していることが殆どです。
心疾患の進行
筋肉量が低下した方では、心不全の発症率が多く、死亡率も高いことが分かっています。心機能が低下して運動量が下がり、それらが動脈硬化から脳梗塞に至る危険性も指摘されるほどです。
2.日本の現状
出典:第53会日本婁年医学会学術集会
既に40歳から20-30%の方がサルコペニアと診断されており、運動習慣のない方は他人事ではないのが分かると思います。
体重でよく聞くBMI(Body Mass Index)でもある程度推測ができますが、問題なのはBMIが正常でも筋肉量だけ少ない方が多いということで、日本ではその傾向が強いようです。
運動習慣という観点からみてみても同様のことが分かります。
スポーツ庁が平成31年に発表した「スポーツの実施状況に関する世論調査」では、成人の週一回以上のスポーツ実施率は55.1%であったそうです。
「平成30年度スポーツ実施状況に関する調査」
https://www.mext.go.jp/sports/content/1413747_001_1.pdf
およそ半分で習慣がないわけで、時間が経過すればサルコペニアになるのは容易に想像できます。
若いころから習慣化しておく必要を強く感じています。
少し長くなりましたし、内容が重めなので今回はここまで。
次回は具体的な対策について書こうと思います。
ではまた。