頭痛で悩まされている方は多いです。
身近にも慢性的な頭痛を持っている方もいると思いますが、統計学的にもとても多いことが分かっています。西洋医学的には、頭痛は「Common disease」なのです。
しかし一部の頭痛を除き、治療は対処療法が基本となる場合が多いです。
今回は頭痛についてまとめてみようと思います。
頭痛とその分類
頭痛とは、頭部の一部ないし全体に生じる疼痛の総称で、病気や体調に伴い一時的に出現するものから、慢性的に繰り返すもの等様々です。
原因も多岐にわたり、国際的な分類である
ICHD-3β(International Classification of Headach Disorders 3nd editionβ)には300種類以上の原因が記載されています。
大まかに分けると頭痛には一次性と二次性があります。
一次性とは、頭痛そのものが原因となるもので、片頭痛等がそれに該当します。
二次性とは、他に原因があり症状として頭痛が生じるもので、脳出血や脳腫瘍等が該当します。
頭痛診療の場合、まず二次性を除外する必要があります。理由としては、二次性頭痛の原因を見逃すと病状が悪化する危険性が高いためです。
特徴としては、危険な兆候(Red flag sign)を見ていきます。
図. Evidence-Based Diagnosis in primary care : 150, 2008.
こういった特徴がある方は要注意で、採血やCT検査等の必要性があります。
逆に、そうでない方は急ぐ必要はなく、頭痛外来や脳神経内科外来を予約し診療を受けてください。
疾患の解説
頻度の高い頭痛について簡単に解説します。
・片頭痛
・筋緊張型頭痛
・不定愁訴としての頭痛
二次性頭痛の頻度はそこまで高くないため、明らかに上図の危険な兆候に合致しなければ検査は必要なく、経過を見ることが多いです。
片頭痛
日本人の8.4%が罹患し、経済損失は2,880億円に上るとのことです。
患者も多く、困っている方が多いということです。
勘違いしている方が多いですが、頭の片一方が痛ければ片頭痛というわけではありません。診断基準もあり、一応検査項目もあります。
片頭痛には特徴があり、それに合致するのかが重要となります。
簡便に診断する場合、「POUNDing」といわれるスケールを使用します。
これは症状や特徴の頭文字です。
Pulsating 拍動性
hOurs 持続時間 4-72時間
Unilateral 片側性
Nausea 嘔気
Disabling 日常生活に支障
各1点で加点し、3点以上ではリスクが高く、2点以下の4倍近いと考えられています。
詳しく知りたい方は以下をご参照ください。
しかし注意事項が二つあります。
一つ目は片頭痛を疑う所見は他にも多数あるということです。
以下の様な特徴がある場合は疑われます。
・体動による症状の増悪
・前兆症状
・感覚過敏
体を動かすと頭痛や嘔気が強くなるため、横になっていたいと訴える方が多いです。
前兆としては視覚、感覚、言語の異常がでることがあります。視覚異常では閃輝暗点(せんきあんてん)が有名で、視野にぎざぎざした幾何学模様が見えることが典型です。
感覚異常では手足のしびれや違和感などが、他には抑うつやいらいら、あくび、眠気、肩こり、胃腸の異常等が出ることがあります。
感覚過敏としては、光過敏や音過敏が有名です。光が眩しいため暗所を好み、音が煩わしいため部屋を閉め切ることもあります。
二つ目は上記の条件に合致しない片頭痛が珍しくないということです。
例えば4割の方で両方に痛みが出たり、3割の方で前兆がなかったり、逆に前兆のみの方もいるなど、診断に苦慮することも多いです。
そういった場合は診断的治療を行うことが多いです。
筋緊張型頭痛
緊張性頭痛ともいわれ、筋肉の緊張が亢進するために生じる頭痛になります。あくまで体感ですが、次項の不定愁訴と合わせると頭痛で困っている方の大部分がこれらに該当します。
意識していない方が多いですが、筋肉は毎日労働をしています。
頭は体重の10%、腕は20%ともいわれ、体重50kgの方だとそれぞれ5kg 、10kgに相当します。
これらを日々支えているわけですが、それをいたわる事を忘れがちです。そのため疲労が蓄積し、次第に筋肉の緊張が高まっていきます。
またトレーニングの習慣がなければ加齢に伴い筋肉量が減少し、その疲労に耐えられなくなります。
それにより肩や頭を引っ張り、頭痛が生じるわけです。高齢者の肩こりや腰の痛みも同じような機序になります。
筋緊張型頭痛の特徴としては以下が挙がります。
・若年女性
・デスクワーク
・姿勢が悪い
・運動習慣がない
・肩がこる
・ストレッチをしない
・なで肩
何れも筋肉の血流が悪くなる原因ばかりです。
また、入浴したりマッサージをすると少し良くなる場合も筋緊張型頭痛の可能性があります。血流が改善されれば一時的に良くなるわけです。しかしそういった介入は体質を変え原因を除いたわけではないため、あくまで一時的なわけです。
不定愁訴としての頭痛
いわゆる明らかな原因が西洋医学的に説明できないものや、精神的な要素が挙がります。
東洋医学的には、何れも大きく分けて二種類の原因が挙がります。
一つ目は臓腑や経絡の通りが滞るもので(不通則痛)、二つ目は気血の不足によるものです(不栄則痛)。
また漢方では、大きく外感(がいかん)と内傷(ないしょう)に分けて考えます。外感は体外からの原因(外邪:がいじゃ)のことで、内傷は内臓(肝脾胃)のことを指します。
外感頭痛は外邪により、内傷頭痛は肝脾胃の失調により発症すると言われます。
外邪とは、季節特有の邪気であり、別名を六淫(りくいん)といいます。
・風邪(ふうじゃ) 春
・暑邪(しょじゃ) 夏
・燥邪(そうじゃ) 秋
・寒邪(かんじゃ) 冬
・湿邪(しつじゃ) 梅雨
・熱邪(ねつじゃ) 高温による
要は外感頭痛は環境要因により、内傷頭痛は内臓の調子によるものです。
気圧や温熱等は前者で、生活習慣の乱れやストレスは後者に影響します。
こうみると、病名がなく保健収載されていないものでも頭痛の原因になるということが分かります。こういったものは検査しても問題がないと言われるわけです。
今回は長くなったのでここまでにします。
次回は具体的な治療方法や対処療法について記載していきます。
ではまた。