頭痛に関する記事の続きとなります。
前回の記事で原因と分類について書いているので、そちらも併せてご参照ください。
今回は頭痛の治療についての記事になります。
前回挙げた頭痛に対する治療薬をまとめます。
・片頭痛
・筋緊張型頭痛
・不定愁訴としての頭痛
片頭痛
簡単に、頭痛が起きる原因についてわかっていることを記載します。
脳神経である三叉神経(さんさしんけい)血管系が活性化、神経原性の炎症が引き起こされることが頭痛の原因であると考えられています。
その過程で、セロトニン、カルシウム遺伝子関連ペプチド(Calcitonin gene-related peptide ; CGRP)や、サブスタンスP、neurokininA等の神経伝達物質が血管を拡張させると言われています。
血管の拡張により周囲に炎症が発生、神経を伝って刺激が中枢に伝達され、頭痛や嘔気等様々な症状が拡散することが分かっています。
詳しくは以下のPDFを見てみて下さい。
臨床神経「片頭痛の病態に関する最新の知見2020」
https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/060010020.pdf
片頭痛の予防薬
予防薬は発作自体の頻度を下げる薬です。
以下のようなものが現在使用が可能です。
・カルシウム拮抗薬(ロメリジン等)
・β遮断薬(プロプラノロール等)
・抗うつ薬(アミトリプチン等)
・ロイコトリエン拮抗薬
・抗セロトニン薬
・ACE/ARB阻害薬
上4つは頻用される薬剤です。
カルシウム拮抗薬、β遮断薬、ACE/ARB阻害薬は高血圧症(や頻脈)に使用される薬剤です。
特にカルシウム拮抗薬は良く使用される予防薬で、前述の頭痛の機序にもCGRPが関わっていることから予防効果が期待されます。
抗うつ薬、抗てんかん薬による予防効果は臨床的に実証されているものの、その機序は不明です。前述のCGRP関連ではないかと言われています。
また、片頭痛を誘発する食材や習慣を避けることも重要です。
・チョコレート
・加工肉
・赤ワイン
・強い光や音、におい
・睡眠不足と過眠
発作時の治療薬
・トリプタン製剤
・鎮痛薬
・漢方薬
呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
黄連解熱湯(おうれんげねつとう)
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
抑肝散(よくかんさん)
逍遥散(しょうようさん)
五苓散(ごれいさん)
桂枝人参湯(けいしにんじんとう)
トリプタン製剤
日本では五種類の薬剤が使用可能です。
簡単に説明すると、薬の効果発現速度や持続時間が各薬剤で異なります。何故か合う合わないもあるため、幾つか試す必要があります。
このサイトが比較的まとまっていたため、御参照下さい。
基本的に頭痛が始まった直後に使用し、それ以上頭痛を悪くしないという効果があります。
鎮痛薬
痛みに対して、ロキソプロフェンやアセトアミノフェン等を使用します。
いわゆる対処療法です。
予防薬としても効果がありますが、発作時に使用することも多いです。
呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
片頭痛に対する第一選択、胃に水分が停滞し冷え(寒飲;かんいん)頭痛が生じる症例に。
繰り返す頭痛やそれに伴う嘔吐、体の緊張に使用
体力が低下して足が冷える方に適応あり。
逆に体に熱がこもる方にはつかえない(裏熱;りねつ)。
五苓散との併用や、トリプタンとの併用で他界頭痛軽減効果の報告あり。
五苓散は水が溜まる(水毒)方で、嘔吐や下痢を伴う頭痛に。
黄連解熱湯(おうれんげねつとう)
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
頭に熱がこもる、充血を伴うような症例に使用。
体力中等度、のぼせやいらいらのある症例に。
抑肝散(よくかんさん)
いらいらが強く、歯ぎしりをしたり、舌を出しにくいような症例に。
逍遥散(しょうようさん)
訴えの多く定まらない頭痛に使用。
冷えやのぼせを訴える方に適応がある。
桂枝人参湯(けいしにんじんとう)
体力が低く胃腸の弱い方向け。
筋緊張型頭痛
疼痛時の治療
漫然と頭痛やだるさ、肩こり等を訴えているため、発作というものは少ないです。頭痛を普段より強く感じることはあるため、治療の開始はいつでも良いでしょう。
・漢方薬
葛根湯(かっこんとう)
釣藤散(ちょうとうさん)
抑肝散(よくかんさん)
・鎮痛薬
・筋弛緩薬
・抗不安薬
葛根湯(かっこんとう)
筋緊張型頭痛に第一に使用される。
実証(≒体力がある)の方に有効で、虚証の方には桂皮加葛根湯を使用。
慢性的な肩こりや頭痛、寝違えた際等にも
釣藤散(ちょうとうさん)
体力がある方の頭痛に使用される。
ストレスが強く(肝陽上亢)、のぼせや耳鳴り、不眠を伴う方に。
心窩部のつかえや食欲不振がある場合にも適応がある。朝に強く、日中緩和されるような方に良い。
抑肝散(よくかんさん)
ストレス、いらいらのある方に。
嘔気があれば抑肝散加陳皮半夏等も。
鎮痛薬、筋弛緩薬、抗不安薬
・エペリゾン
上記の様な薬剤が使用されることがあります。
しかしいずれも対処療法にすぎず、副作用も懸念されるためあまり推奨されません。
筋弛緩薬は緊張が強い筋肉を強制的に弛緩させるもので、ふらつきやだるさ、めまい等を誘発することがあります。
抗不安薬はいわゆる「鎮静薬」であり、精神的な緊張を弛緩させることで効果を発揮します。しかし上記筋弛緩薬同様副作用の懸念があります。特にだるさや意欲の減退、中毒性には問題があり、常用するとやめられなくなる方もいる程です。
予防方法
基本的には生活習慣の悪化から肩や首の筋緊張が亢進しているために起こります。予防には運動習慣やストレッチを中心とした生活指導が必須です。
詳細は前回の記事をご参照下さい。
不定愁訴としての頭痛
今までの記事で既に治療方法は登場しています。
筋緊張型頭痛と同様に生活指導を導入し、逍遥散(しょうようさん)を中心にいらいらや不眠等に応じて漢方薬を使い分けることが有効です。
基本的に精神的な要素が過分にありますが、抗不安薬や睡眠薬は焼け石に水であることが多いです。常用しているとやめられず、次第に活気もなくなっていくため注意が必要です。
食事療法
また、上記頭痛全般に使えるのが食事療法です。
頭痛時に効果があるものを挙げていきます。
・アーモンド
・ヨーグルト
・胡麻(ごま)
・紅茶
・外感性頭痛に対する食材
風熱
風湿
風寒
アーモンド
マグネシウムによる血管収縮/拡張の調節が期待されています。片頭痛に対する予防効果も一部報告があります。
動脈硬化に対する効果もありますが、過量摂取は尿酸値の上昇含め注意が必要です。
こちらは私も常食しているものです。
表面に少し砂糖のコーティングがあり、紅茶や珈琲によく合います。
ヨーグルト
カルシウム不足や腸内環境を改善するためと考えられています。欧州の一部地域ではそういった習慣があるそうです。
今後記事にしたいとは思いますが、脂肪分を含まないヨーグルトが流行っています。無論脂肪以外にも多数の栄養素も含まれていますが、乳製品の良い点はその脂肪分にあるということは有名です。
過剰な脂肪制限は、果たして健康的なのでしょうか?
胡麻(ごま)
様々な栄養素が含まれる非常に優れた食品です。ビタミンB群やEが豊富で、エストロゲンのバランスを調節すると言われており、生理時の頭痛や、筋肉の血流が悪い筋緊張型頭痛等に効果が期待されます。
また、前述のマグネシウムも豊富です。
以前紹介した、胡麻(ごま)と胡桃(くるみ)を豆乳にいれたホットドリンクは、そういう意味でも有効でしょう。
胡麻も白と黒両方つかうことで、臓器の機能を補う効果が期待できます。
紅茶
紅茶には体を温める「温性」があり、内蔵を温めることで気血の巡りを改善し、頭痛を軽減することが期待できます。
またクコの実を入れて疲労回復を、シナモンで内臓から体を温め睡眠を助ける「熱性」も期待できます。
紅茶には苦味があり、苦味には「心;しん」つまり神経を安定させる効果があります。
これは推測ですが、紅茶の種類も影響すると思います。ダージリンやそのfirst flash(ファーストフラッシュ)等の若い紅茶には苦味があまりありません。
そう考えると、秋摘みであるAutumnal(オータムナル)や、よりコクがあり味わいの深い品種を選ぶとよいのではないでしょうか。
個人的にはセイロンが良いと考えています。ミルクティーにしても負けない強い味わいがあり、香りも高いためです。
無論、冷たい紅茶ではなく、温かいものを飲むようにしてください。
この辺りが無難でしょうか。
ペパーミントに血管収縮効果があり、ラベンダーには鎮静効果が、ローズマリーは鎮痛薬に使われるほどです。カモミールも同様です。
ハブティーの香りには何れも鎮静作用があるともいわれており、取り入れてみるのもいいかもしれません。
外感性頭痛に対する食材
前回の記事で書いた通り、外の環境が原因で頭痛が生じる場合があります。その際に良いとされる食材を記載します。
風熱 冬以外、暑く汗がでてのどが乾く
せろり、白菜、ゴーヤ、キュウリ、トマト
リンゴ、ナシ、キウイ、豆腐、緑茶
風湿 頭が重い、胸が苦しい、食欲がない等
雨が降る湿気の多い時期に
ねぎ、大葉、生姜、みょうが
風寒 寒い時期に
ねぎ、大葉、生姜、シナモン
春夏で暑い時はトマトや豆腐、緑茶が使いやすいです。
蒸し暑い時や寒い時は葱、大葉、生姜でしょう。
特に寒い時は、ミルクティーとシナモンも使い勝手が良いです。
これは個人的な趣味ですが、少し疲れたと思った時はシナモンスティックの臭いを嗅いでいます。ゆっくり深呼吸するとリラックスできます。
慢性的に頭痛がある方は、色々と試して導入してみて下さい。西洋医薬が必要になる場面もありますが、生活習慣に伴うものだと効果が薄く、いつまでも頭痛が無くならない、ということが多いです。
日々の習慣を見直し、生活の質を上げたいものです。
ではまた