片頭痛の新薬に関する記事です。
前回のパーキンソンの記事と違い、
今回は非医療者向けです。
2021年1月に申請され、4月に承認されると言われている注射薬がありますので御紹介します。
新薬の概要
薬の名前は
「ガルカネズマブ(エムガルティ®)」
です。
製造はイーライリリーで、米国の製薬会社になります。日本での販売は第一三共です。
余談ですが薬の名前には二つの表記があります。
一つ目は「一般名」で二つ目は「製品名」です。
前者は物質の名称で、後者は商品として売り出す際の名前です。
なんでわざわざ分けるのかは、わかりやすさを重視してのことでしょう。
しかし名前がいくつもあって紛らわしいことや、薬の効果や成分を重視すると、一般名で統一するのが良いと思いますが、そうはなっていない面倒くささがあります。
この薬剤はいわゆる抗体医薬で、新しいタイプの薬になります。
抗体医薬とは体内で生成される特定の抗体の作用にのみ影響を及ぼす薬剤の総称です。
既存の薬は全身の広い範囲で作用してしまうことから、副作用が多い傾向にあると言われますが、上記抗体医薬は作用部位を狭めることでそのリスクを軽減することが可能だと理論上言われています。
また、特定の部位に強く作用することで、効果も強いというのが抗体医薬の特徴となります。
エムガルティは「カルシトニン遺伝子関連ペプチド;CGRP」に対する阻害薬となります。CGRPは血管作動性ニューロペプチドと呼ばれ、この物質が放出されることで神経由来の炎症が発生し、頭痛につながることが分かっています。それを阻害することで片頭痛の予防をしようというわけです。
詳しく知りたい方は以下のサイトを覗いてみて下さい。
〇日本頭痛学会「片頭痛」
https://www.jhsnet.net/GUIDELINE/gl2013/075-113_2-1.pdf
〇臨床神経「片頭痛の病態に関する最新の知見2020」
https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/060010020.pdf
治療効果と副作用
海外で行われた試験(EVOLVE-2、CGAH試験)の結果が特徴的で、以下のようになります。
・片頭痛発作の日数が半分に
・発作が消失した症例も11%程度いた
・他の予防薬を投与している症例にも効いた
日本でも同様の試験が行われ(CGAN試験)、上記の様な傾向は日本人でより強かったようです。
つまりいくつも予防薬を飲んでいる日本人の重症片頭痛患者によく効くということです。
副作用として多いのは以下になります。
・注射部位の痛み 1%
・注射部位の腫れ 14%
・めまい、蕁麻疹 <1%
あまり目立ったものは報告がないようです。
そういう意味では安心ですね。
投与方法と薬価
投与方法は皮下注射となります。
初めは240mgを投与し、2週間後に120mgを投与、以降4週おきに投与します。
外来に通院する手間はあります。
しかし現役世代に多い病気であることと、生活の質を下げ生産効率を下げることから、とても有用な薬剤であることが分かります。
これは余談ですが、日本では皮下注ではなく経口薬の治験が進行中です。
薬価は、正式には未承認であり現状分かっていません。
最後に
最近は新しい薬剤が多数販売されています。
より安全で効果があり、今まで手の付けられなかった症状や病気に効果のあるものが次々と発表されています。
無論新薬であり薬価も高く、社会保障費も増える一方であることを考えると、諸手で喜べない側面もあります。
しかし、耐えるしかなかった患者の状態を改善できるのは非常に良いことで、期待が集まっているのは間違いありません。
であればこそ、生活習慣病の予防や健康維持に努め、予防ができる病気を減らすことで医療費を抑制するほかないと考えます。
必要なところに必要な資金を集められるよう、日々の生活に気を付けたいものです。
ではまた