骨格筋が減少し機能が低下した状態を「サルコペニア」といいます。
詳しくは以前の記事で解説しています。
筋萎縮の予防が生活の質(QOL)を維持し、生活習慣病を予防することができるため、とても重要になります。
蛋白質の摂取量について解説しましたが、近年ビタミンDの有効性も注目されています。
今回ビタミンDの効用についてです。
ビタミンDとは
脂溶性ビタミンの一つです。
D2からD7があり、D1は間違った化合物であるため欠番となっています。
重要なのはD2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)です。
日本人はビタミンDが不足していると言われています。
Miyamotoらによると、人口の20%程度しか必要量を満たしていないそうです。
図. 活性型ビタミンD接種状況と年齢.
上図は下の文献から抜粋した図です。
上図は39-49歳となっていますが、他の年齢でも摂取量が満たされている「normal」に該当する割合はあまり変わりませんでした。
つまり7割近い人が慢性的なビタミンD不足にあるということです。
「VitaminD Deficiency with High Intact PTH Levels is More Common in Younger than in Older Women : A Study of Women Aged 39-64 Years」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kjm/65/2/65_2015-0010-OA/_pdf/-char/ja
ビタミンDの効果
主な効果は以下があります。
・腸からのカルシウム吸収
・血液のカルシウムとリンを調節
・骨形成
・骨の成長
・癌にかかりづらくなる
・生活習慣病の予防
主にカルシウムを増やし、骨を強くするという印象があると思いますが、近年では生活習慣病や癌との関連性も指摘され始めています。
癌にかかりづらくなる
国立がん研究センターが2018年に発表したJPHC研究を紹介します。
当研究では日本人3万人超を追跡した結果を報告しています。
過去にも大腸癌や肺癌のリスクが低下するという報告はありましたが、癌全体の報告はありませんでした。
今回の報告では、何らかの癌発症リスクが19~25%低下したとのことです。
図. 血中ビタミンD濃度と癌のリスク.
出典. 日本習慣病予防協会ニュースより.
近年、ビタミンDには細胞の増殖を抑制し、細胞死を促進する効果も報告されており、そういった点が関連していると考えられます。
生活習慣病の予防
ビタミンDが血管に吸収されると血管の石灰化を抑制することが報告されています。
これはビタミンDが脂質の酸化を抑制するためと考えられます。
その結果、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが低下することも報告されています。
「Role of Vitamin D in Atherosclerosis」
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.113.002654
上記の文献は循環器領域で有名な雑誌「Circulation」の報告です。
英語ですが興味があれば見てみて下さい。
具体的な摂取方法
食事で摂るかサプリメントで補うかです。
以下はビタミンDが含まれる食品です。
・鮭
・鮪
・鯖
・レバー
・チーズ
・卵黄
・キノコ類 きくらげ、シイタケ
・シリアル
・以下の製品の一部
オレンジジュース、ヨーグルト、豆乳
鮭や鯖を中心に、チーズや卵黄、きくらげを追加するのが良いでしょう。
以下のサイトも参照して下さい。
「ビタミンDを含む食品」
https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/leaf_02_181003.pdf
サプリメントもあり、最近は活性型ビタミンDもサプリで販売されています。食事だけでは不足してしまう場合は補充のため検討して下さい。
しかし注意して欲しいのは過量内服による過剰症です。
以前は「活性型」ではなかったためか過剰症の心配はありませんでした。
症状としては食欲不振や嘔吐、石灰化等があり注意が必要です。
脂溶性ビタミンであり脂質と合わせて摂取すると吸収が良いです。
過剰な脂質制限下で活性型ビタミンDのサプリを服用するのは避けて下さい。
注意事項
気を付けて欲しいのは、効果を期待してサプリを大量に摂取したりしないようにしてほしいということです。
最近だと感染症にかかりにくいというデータから、ビタミンDを摂取していれば免疫力が上がりコロナに感染しないという発言を見かけます。
2020年に欧州20ヵ国やアイルランドで報告された文献が論拠なようです。
しかし単一の成分を多量に摂取しても、現実に影響を及ぼす様な効果が得られるという根拠はありません。
感染している人を調べたらビタミンD濃度が低かったことと、ビタミンDを摂取すればコロナにかかりにくいということは同じではありません。
これは統計学的に因果関係の証明が難しいことを示します。
統計学的に有効性を証明するためには、本来は「ランダム化比較試験」を行う必要があり、それ以外の研究はあくまで「可能性」に過ぎません。
先の欧州の報告で言うと、ビタミンD濃度が高かったから感染率が低かったのか、ビタミンDを多く含む食品を摂取する人達がいて、その食品に含まれる他の成分が感染率を下げたのか分かりません。
あるいは感染したからビタミンDが下がった可能性は除外できません。
また、日照時間や土地の特性等他に影響を及ぼす因子(交絡因子)が関係しているとも考えられます。
因果関係の証明が非常に難しいのはご理解いただけると思います。
何が正しいか、真実は結局わかりません。
そのためにも日々の習慣の積み重ねを大事にしたいものです。
ではまた