日々平穏

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なんちゃって美食家を目指して

頭痛03 片頭痛の新薬

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片頭痛の新薬に関する記事です。

 

前回のパーキンソンの記事と違い、

今回は非医療者向けです。

 

2021年1月に申請され、4月に承認されると言われている注射薬がありますので御紹介します。

 

 

 

 

新薬の概要

薬の名前は

「ガルカネズマブ(エムガルティ®)」

です。

 

製造はイーライリリーで、米国の製薬会社になります。日本での販売は第一三共です。

 

余談ですが薬の名前には二つの表記があります。

一つ目は「一般名」で二つ目は「製品名」です。

前者は物質の名称で、後者は商品として売り出す際の名前です。

 

なんでわざわざ分けるのかは、わかりやすさを重視してのことでしょう。

しかし名前がいくつもあって紛らわしいことや、薬の効果や成分を重視すると、一般名で統一するのが良いと思いますが、そうはなっていない面倒くささがあります。

 

 

この薬剤はいわゆる抗体医薬で、新しいタイプの薬になります。

抗体医薬とは体内で生成される特定の抗体の作用にのみ影響を及ぼす薬剤の総称です。

 

既存の薬は全身の広い範囲で作用してしまうことから、副作用が多い傾向にあると言われますが、上記抗体医薬は作用部位を狭めることでそのリスクを軽減することが可能だと理論上言われています。

 

また、特定の部位に強く作用することで、効果も強いというのが抗体医薬の特徴となります。

 

 

エムガルティは「カルシトニン遺伝子関連ペプチド;CGRP」に対する阻害薬となります。CGRPは血管作動性ニューロペプチドと呼ばれ、この物質が放出されることで神経由来の炎症が発生し、頭痛につながることが分かっています。それを阻害することで片頭痛の予防をしようというわけです。

 

詳しく知りたい方は以下のサイトを覗いてみて下さい。

〇日本頭痛学会「片頭痛

 https://www.jhsnet.net/GUIDELINE/gl2013/075-113_2-1.pdf

〇臨床神経「片頭痛の病態に関する最新の知見2020」

 https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/060010020.pdf

 

 

治療効果と副作用

海外で行われた試験(EVOLVE-2、CGAH試験)の結果が特徴的で、以下のようになります。

 ・片頭痛発作の日数が半分に 

 ・発作が消失した症例も11%程度いた

 ・他の予防薬を投与している症例にも効いた

 

日本でも同様の試験が行われ(CGAN試験)、上記の様な傾向は日本人でより強かったようです。

 

つまりいくつも予防薬を飲んでいる日本人の重症片頭痛患者によく効くということです。

 

 

副作用として多いのは以下になります。

 ・注射部位の痛み 1%

 ・注射部位の腫れ 14%

 ・めまい、蕁麻疹 <1%

 

あまり目立ったものは報告がないようです。

そういう意味では安心ですね。

 

 

投与方法と薬価

投与方法は皮下注射となります。

初めは240mgを投与し、2週間後に120mgを投与、以降4週おきに投与します。

 

外来に通院する手間はあります。

しかし現役世代に多い病気であることと、生活の質を下げ生産効率を下げることから、とても有用な薬剤であることが分かります。

 

これは余談ですが、日本では皮下注ではなく経口薬の治験が進行中です。

 

 

薬価は、正式には未承認であり現状分かっていません。

 

 

最後に

最近は新しい薬剤が多数販売されています。

より安全で効果があり、今まで手の付けられなかった症状や病気に効果のあるものが次々と発表されています。

 

無論新薬であり薬価も高く、社会保障費も増える一方であることを考えると、諸手で喜べない側面もあります。

 

しかし、耐えるしかなかった患者の状態を改善できるのは非常に良いことで、期待が集まっているのは間違いありません。

 

であればこそ、生活習慣病の予防や健康維持に努め、予防ができる病気を減らすことで医療費を抑制するほかないと考えます。

 

必要なところに必要な資金を集められるよう、日々の生活に気を付けたいものです。

 

ではまた

 

年度始まりの忙しさ

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今回は近況報告になります。

 

年度始まり如何お過ごしでしょうか。

正月の様な挨拶ですが、そう言いたくなる忙しさにブログも書けずにいます。

 

人員も大幅に変わり、その引継ぎやら業務負担の増加やら、外来診療システムの調節やら、なかなかまとまった時間がありません。

 

ブログネタばかり溜まり、なかなか裏どりする時間が取れないので、もうしばらくはこの状態が続きそうです。

 

ある程度目途が経ったら、溜まったネタを消化したいと思い温めていますので、その時は是非読んでみて下さい。

 

今温めているのは以下の様な内容になります。

 ・玄米に関して

 ・緑茶の効能

 ・片頭痛の新薬について

 ・サルコペニアについての更新

 ・パーキンソン病診療について

 ・「西洋医学=病院」との付き合い方

 ・紅茶の紹介

 ・一酸化炭素中毒の経過報告

 ・心の平穏について

 

 

 

余談ですが、私はいわゆる中堅医師です。病院ではいわゆる医長で、二番手になります。若くはないが、中年でなく、診療経験が積まれ一人で診療が回せるようになった段階です。

 

何故そんなことを言うのかというと、現在の病院の診療体制やら当番体制が旧態依然として古く、あまりに非効率的であると感じていたためです。皆さんの職場はどうでしょうか?

 

昔からそうしていたとか、今まではそうだったという言葉に違和感を覚え、変える必要があると強く感じているという意味では、若い世代に一応入るのでしょうか。

 

去年からずっとその体制の調節に奔走し、コロナ禍で多忙な中呼び出し当番の体制を病院単位で変え、他の医員はとても喜んでいました。

ちなみに診療精度や患者の予後は全く変わっていませんが、仕事量は3割以下になりました。

 

今は外来診療の体制を変えようと奔走中で、より効率的で誰も相談先を悩まない自然な体制を構築中です。

 

日本がこの数十年、停滞した理由を垣間見た気がしています。

 

時間ができ次第、ブログ作成を再開したいと思います。

 

ではまた。

 

 

 

玄米の効能00 概要

 

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「米は力!」

 

上記は去年流行ったフレーズです。

古来から日本人は米と共にあり、米が資産であった時代があるほど密接です。

 

近年食事の西洋化に伴い米の消費量が少なくなっているようです。しかしそんな米には様々な効能効果があります。

 

今回から何回かに分けて、玄米について書きたいと思います。

 

 

 

 

玄米とは

 

収穫した稲から種籾(たねもみ)をはずした状態の「種」のことです。

そこから果皮や胚芽、糠(ぬか)等を取り除くと白米になります。

 

しかし取り除かれる上記の部分には、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富です。白米に比べて、玄米には食物繊維は6倍ビタミンEは12倍ミネラルは5倍含まれるといわれています。

 

リンゴやブドウ、ミカン等の果物も同様で、美味しくないと捨てられる皮に栄養素が豊富なのは有名ですね。美味しいだけでは健康とは言えないということです。

 

 

 

玄米の種類

 

以下の様な種類があります。

・分づき米(ぶづきまい)

・発芽玄米(はつがげんまい)

酵素玄米(こうそげんまい)

 

分づき米とは、硬くて食べにくい玄米の糠(ぬか)層を除いたものです。

 

除く割合によってそれぞれ7分づき(ななぶづき)、5分づき(ごぶづき)等、3分づき(さんぶづき)と表現します。

 

発芽玄米とは、種である玄米を僅かに発芽させたものです。発芽により一部成分や酵素が増えるとの報告があり、フェラル酸やオリザール、GABA等の報告があります。

 

酵素玄米とは、小豆(あずき)と塩を混ぜて炊き、3日熟成させたものです。GABAの増加や発酵食品としての効用も期待されており、離乳食としても使われることがあります。

 

 

 

玄米の効能

 

薬膳としては以下の様な特徴があります。

・五味 甘味 ⇒ 滋養増強

         緩和作用(痛み、緊張)

・水滞(すいたい)の改善 

    水分の調節作用あり

    むくみ、めまい、鼻汁)

 

 

その他にも以下の様な効果が期待できます。 

 ・咀嚼(そしゃく=かむ力)機能向上

・便秘解消

・健康長寿

 

 

 

咀嚼機能向上

 

白米よりも硬く、噛み応えがあります。

近年食事が柔らかくなる傾向があり、その影響が懸念されています。特に注意したいのは、認知機能に対する影響です。

 

高齢になると筋力が下がり、咀嚼機能が低下します。より柔らかいものや食べやすい物を好むようになり、認知機能が低下するという報告があります。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

また、高齢者にガムをかませると脳血流が増えるという報告や、残っている歯の本数認知症に関連があるという報告も有名です。

 

 

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 日本歯科医師会健康寿命の延長に向けて」

 

上記は岩手医科大学が発表した文献になります。8020群とは、80歳になっても歯を20本以上残している人達のことです。歯がない方や義歯を使用している群よりも赤い部分が多く、脳血流が保たれていることが分かります。

 

 

こう書くと高齢者しか関係がないと思われるかもしれませんが、若い方が意識することをお勧めします。歯が抜ける原因は歯周炎であり、日々の管理がとても重要だからです。

 

 

詳しくは過去の記事も参照して下さい。

 

khachi.hatenablog.com

 

 

 

便秘解消

 

以前の記事でも書きましたが、食物繊維の摂取は便秘の解消につながります。ともすれば腸内環境の改善につながり、年齢に関係なく様々な効果が期待できます。

 

 

khachi.hatenablog.com

 

 

白米より少し消化が悪いため、炊飯器でたくよりは粥(かゆ)に適しています。

以前の記事でも書きましたが、私は朝に玄米の中華粥を食べています。体の冷えに対してもそうですが、腸内環境を整えることも目的としています。

 

 

そのうち作り方を記事にしたいと思います。

 

 

 

健康長寿

 

これは結果論ですが、咀嚼(そしゃく)機能の維持や認知症の予防、多数の栄養素や腸内環境の改善により、健康的な生活が望めるでしょう。

是非試してみて下さい。

 

 

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上記は私も購入している合鴨米の玄米です。

 

合鴨米(あいがもまい)とは、農薬を使わず田んぼにカモを話して害虫を駆除する方法で栽培されている米のことです。自然な味わいで噛めば噛むほど味があるお勧めの米です。

 

 

ふるさと納税なので、楽天スーパーセールの時に購入することをお勧めします。

 

 

一つ注意事項があります。

玄米が体にいいからと食べ過ぎは禁物です。食物繊維が多いため、腸の壁に張り付いて吸収障害を起こすことがわかっています。

 

特に幼い方や高齢者は要注意です。

 

何事もバランス良く、色々なものを少量摂取することが重要だということです。

 

 

ではまた

 

紅茶02 Sikkim-Temi(シッキム-テミ)

 

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紅茶の記事第二弾になります。

 

前回のぺティアガラに続き、

好きな紅茶で1,2を争う銘柄を紹介します。

 

インドの紅茶で、

Temi(テミ)農園のSikkim(シッキム)です。

 

 

 

Sikkimとは

Sikkimとは、チベットダージリンの間に位置する地域です。旧Sikkim王国があった場所で、昔はネパール領、今現在はインド自治です。

 

 

 

Sikkimは四つの地方があり、東西南北に分かれています。Temi農園は南地区に所属しています。

Sikkimには農園がひとつしかなく、それがTemi農園です。

 

ヒマラヤの麓にあり、世界第三位の高峰「カンチエンジュンガ」とも近いです。同山は標高8,598mであり、高地に発生する霧が透明感のある味を作っているといわれます。

 

国際認定のオーガニックエリアであり、全く農薬を使用していません。そういった理由からなのか、近年注目が集まっているようです。 

 

地理的にダージリンに近いこともあり、ダージリンと認定されており、味も似ています。栽培面積は172ヘクタールで、年間生産量は100トンに上ります。

 

Sikkimには年3回のクオリティシーズンがあり、3月、5月、10月が該当します。

 

 

紅茶の特長



 

水色は明るく(Bright)、淡い(Light)琥珀の様な淡黄橙色です。

味は柔らかく(Mild)、甘みが多いです。

香味もあり、仄かな渋みがとてもよいです。

香りはフラワリーでさわやかです。

 

ダージリンとも似ているため、Muscatel(マスカテル;マスカットの様)な風味も伴います。これは巨峰の様な赤いブドウの皮を何度も噛んだような味と表現されます。

 

ここ数年で値段が上がっており、ほぼ2, 3倍になってしまいました。。。

 注目度も上がっているのか、入荷も少なくなっている気がします。

 

ダージリンセカンドフラッシュよりも安く、それでいて味や香りは負けていないことから、一部の人の間ではダージリンより好まれている気がします。

 

前回のぺティアガラ同様、この銘柄もマリアージュフレイルで購入しています。

しかし、同社HPの銘柄表をみても載っていないことに気が付きました。。

 

欲しい方は新宿伊勢丹横のマリアージュフレイルを訪ねてみて下さい。

 

 

 

余談ですが、新しいカップを買いました。

WEDGEWOODのカップで、つい衝動買いしてしまいました。

 
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過剰に華美でなく、それでいて陶器の白と淡い青がとても気に入っています。

器が変わるとそれだけで気分が上がりますね。

 

 

ではまた

 

 

ストレッチ 頭痛対策

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ストレッチの習慣はありますか?

 

ストレッチをしないと全身の筋肉が次第に硬くなり、痛みや動かしづらさにつながります。

 

それによる異常は様々で、気が付かずに生活の質が下がっていることも多いです。また、様々な症状を訴え病院を受診しても、検査で異常がないと言われることがほとんどです。

 

ストレッチの必要性と方法についてまとめます。

今回は特に、頭痛の記事を書いたので頭や首を中心にしています。

 

khachi.hatenablog.com

 

 

 

 

ストレッチの必要性

何故ストレッチをする必要があるのか。

 

「血流を改善し、筋肉の柔軟にする」

この一言に尽きます。

 

頭や首、肩の筋肉は常に労働しています

頭や腕は5-10㎏前後の重さがあり、それを毎日支えているわけです。

 

しかし6時間前後の休息のみで強制労働が続くと、気が付けば疲労が蓄積し筋肉の緊張が亢進していきます。

 

その結果血流が低下し筋肉が硬くなり、他の筋肉や部位を引っ張るようになるため頭痛や肩こりの原因となるのです。

 

また、筋肉の緊張が亢進し血流が低下している状態では、新陳代謝も低下してしまいます。体の冷えや体調不良、食欲低下の原因になることもあります。

 

 

ストレッチの方法

以下について解説していきます。

・回数

・時間

・タイミング

・方法

 

回数

よく見る間違いとして、回数が少ないというものがあります。一度やっておしまいで、何となくの満足を得るのみになっている方が多い印象があります。

 

ではどの程度行えばいいのか。

基本的には一つの筋肉あたり、2-3回以上行うのが良いです。

 

左右ありますので、それを2-3回となるとそれなりに時間がかかります。しかしそれくらいしないと緊張はとれません。

 

今まで習慣がなかった方だと、ほぐすのに月単位の時間がかかることもあります。

 

 

時間

回数同様、こちらも短い方が多いです。

基本的に、一つの筋肉一回当たり20-30秒程度行うのが良いです。

 

5-10秒程度が多く、それでは十分に筋肉が伸びません。

これは体感的なものではなく、下記の様な研究も行われています。

 

www.researchgate.net

 

これは1994年に行われた研究で、ハムストリングス(足の筋肉)の筋緊張とストレッチ時間を比較した文献です。

conclusion(結論)では、30-60秒が良いとしています。

 

無論症例数も少なく、比較方法や統計学的影響力が少ない研究ではあります。

 

5個の筋肉を左右で2-3回、20-30秒行うだけで400-900秒かかります。これは6-15分となります。

 

慣れてきて筋肉の数を増やすと、それだけで30分は優に超えるわけです。それ位伸ばして初めて効果があると思ってください。

 

 

タイミング

筋トレやスポーツの後に行うイメージが強いと思います。しかし今回は頭痛や肩こりを対象にしているため、別のタイミングを推奨します。

 

それは「風呂上り」です。

風呂上りは体が温まり、筋肉の血流量も増えています。その時にストレッチをすることで、筋肉を十分に伸ばすことが可能です。

 

また夜風呂上りにストレッチをすると、全身の気血の巡りもよくなります。その結果寝付きやすくなり、睡眠の質も上がると言われています。

 

頭痛や肩こりがある方は生活習慣が悪く、往々にして不眠や睡眠の質が低下している場合が多いため、是非取り入れたいものです。

 

可能であれば、シャワー浴ではなく、浴槽につかることをお勧めします。

 

 

方法

具体的な方法について解説します。

Google等で調べると情報が多く悩むと思います。

 

今回はストレッチ習慣がなく、頭痛や肩こりに悩むかた向けに紹介します。前述した通り慣れてきた場合は筋肉の数を増やすとより効果的です。

 

まずは全般的な注意事項から。

 

・どの筋肉を伸ばすのか意識する

ストレッチの目的は筋肉を伸ばす事です。当たり前だと思うかもしれませんんが、どの筋肉を伸ばすか認識しておらず、十分に伸ばせていない場合が多いのです。

 

どの筋肉がどこにつながっていて、どんな働きがあり、どう伸ばせば効率が良いかをイメージする必要があります。直感的に伸ばせていることが分かる方には不要ですが、そうでない場合は理解することで効果が上がります。

 

・ゆっくり伸ばすイメージ

首は特にそうですが、目的の筋肉を一方向にゆっくりが原則です。

 

首をぐるぐるとまわしてたり、早く動かす動作はかえって逆効果になります。特に首の場合は、回す力によって血管が裂けてしまい、若くして脳梗塞になることがあります。

 

これを椎骨脳底動脈解離(ついこつのうていどうみゃくかいり)といい、不必要に圧迫するマッサージ等でも発症することがあります。

 

 

 ・ストレッチ方法

次に各筋肉のストレッチについてまとめます。

簡単にまとめると、

 

首を前と後ろ、横に倒す。

腕を後ろに回し、上と下で引っ張る。

腕を前で引っ張る。

 

これだけです。

初めはやり方を覚える必要があり難しく感じるかもしれませんが、覚えてしまえば存外簡単です。 

 

 

以下の筋肉を伸ばしていきます。

僧帽筋上部/中部(そうぼうきん)

・後頸部筋群(こうけいぶきんぐん)

・前頸部筋群(ぜんけいぶきんぐん)

・胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)

・肩甲骨周囲筋群(けんこうこつしゅうい)

 

基本的にはこの5つをまずは伸ばしていきます。

 

僧帽筋上部/中部(そうぼうきん)

先ずは下図を見てみましょう。

 

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僧帽筋(そうぼうきん)とは、頭から背骨、肩にかけて広く広がる背中の筋肉です。それぞれ上部と中部、下部線維に分かれており、肩を挙上したり、後ろに引いたり、肩の位置を保持する機能があります。

 

3つの部位ごとにストレッチの方法は異なりますが、今回は上部と中部について解説します。

 


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上図がそのストレッチの様子です。

手で反対の腕を後ろに引っ張ると、肩の筋肉が固定されます。その状態で首を反対に傾けると、首の筋肉と僧帽筋上部が伸びます。

鎖骨から首の筋肉が引っ張られ、肩が伸びてぴんと張っているのが分かると思います。

 

注意するのは首を前に傾けないことです。

真横と、やや後ろに傾けるとより効いているのが実感できます。

 

 

後頸部筋群(こうけいぶきんぐん)

頭の後ろの筋肉です。

以下の様な筋肉が対象です。

・頭半棘筋(とうはんきょくきん)

・頭板状筋(とうばんじょうきん)

僧帽筋上部

・頚/半棘筋(けいきょくきん/はんきょくきん)

 

今回は覚える必要はなありません。筋肉が細かすぎるのと、ひとつの動作でざっくり伸ばすことが可能なためです。

筋肉についてはこちらに乗っていますので、興味があれば見てみて下さい。

 

 

www.medicalview.co.jp

 

 

方法としては、両手で頭の後ろを押さえ、前に倒します。

 


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首や肩、背中の筋肉が十分に伸びるよう、姿勢を正してゆっくり行います。

 

押さえるのは頭のやや上で、手のひらで前にゆっくり倒すと良いです。

 

 

前頸部筋群(ぜんけいぶきんぐん)

首の前にある筋肉群を伸ばしていきます。

・広頚筋(こうけいきん)

・顎舌骨/二腹筋(がくぜっこつ/にふくきん)

・胸骨舌骨筋(きょうこつぜっこつきん)

・斜角筋群(しゃかくきんぐん)

・胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)

 

こちらも後頚部と同様で覚える必要はありません。

 

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少しみづらいですが、図をのせました。

参考までに。

 

方法としては、両手の人差し指と中指を合わせ、顎先を下から上に押し上げます。その際に自分でも顎先を上げると、筋肉が伸びるのが実感できると思います。

 


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胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)

一つ前の「前頸部筋群」にもあった筋肉です。

この筋肉は首を左右に向ける作用もあり、首にある大きな筋肉の一つです。

 

まず肩を反対の手で後ろに押します。その際に、押す手を肩と同じ高さに水平に上げると力が入りやすいです。

その状態で首を反対側に傾けると、胸鎖乳突筋を中心に首の横にある筋肉群が伸びるわけです。

 


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こちらも頭を少し後ろに傾けるとよりよいです。

個人的には、首の凝りには一番効果があると思っています。

 

 

肩甲骨周囲筋群(けんこうこつしゅうい)

首のみならず、肩や腕のストレッチも重要です。

筋肉は全身に400個近くあり、それらが複合的に関わっているためです。

 

そのため前の筋肉とちがい、幾つかのストレッチを紹介します。

 

以下の筋肉を伸ばしていきます。

・肩甲挙筋(けんこうきょきん)

上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)

・棘上筋(きょくじょうきん)

・棘下筋(きょくかきん)

 

 

肩甲挙筋(けんこうきょきん)

僧帽筋の図にもあった筋肉です。

肩を上げる働きがあります。

 

右の肩甲挙筋を伸ばす方法を解説します。

左手で頭の右側をつかみ、左に傾けるだけです。

 


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注意点としては、頭を少し後ろに傾けるとよいのと、右手を後ろに回すとより伸ばしやすいことです。

 

 

上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)

何故腕なのかと思うかもしれませんが、腕と肩、首はつながっています。腰や足ですら、上半身に影響がでるという考えもあるほどです。

 

伸ばし方は簡単で、昔体育でやったことがあると思います。

 

腕を上げ、頭の後ろに持っていきます。

反対の手で肘をつかみ、左に引くだけです。

 


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棘上筋(きょくじょうきん)

肩甲骨の上にある筋肉です。

こちらも知っている人は多いと思います。

 

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上腕三頭筋の上下逆で、今後は腕を後ろに回し、反対に引っ張るだけです。

 

注意点としては、首を少し前に倒すと棘上筋が伸びやすいです。

 


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棘下筋(きょくかきん)

肩甲骨の下についている筋肉で、先程の棘上筋と対になります。

こちらもやったことがある方は多いはずです。

 

伸ばし方は腕を前に水平に上げ、肘を曲げます。

反対の手でその肘をつかみ腕と反対側に、水平に引き寄せます。

 

その際に首を少し反対に、後ろにかたむけると伸ばしやすいです。

 


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少し長い記事になりました。

しかし覚えてしまえばとても簡単です。

 

首を前と後ろ、横に倒す。

腕を後ろに回し、上と下で引っ張る。

腕を前で引っ張る。

 

これだけです。

 

しかしこれを2-3回、20-3-秒かけて、風呂上りに毎日行うと、首や肩の筋肉が柔らかくなってきます。人によっては一月、症状のある方は数か月で変化に気が付くと思います。

 

症状がなくても生活の質が上がりますので、導入してみて下さい。

 

似たような内容は書籍やYoutubeでも多数発信されているので、参考にして自分の方法を確立するとよいでしょう。

 

参考までにある程度読みやすい、見やすい本や動画を貼っておきます。

 

 

【肩甲骨ストレッチ】ガチガチに固まった肩甲骨を開放する「肩甲骨ストレッチ」【大分市 腰痛治療家 GENRYU ( 安部元隆 )】 - YouTube

 

【3分】肩甲骨を制すものはダイエットを制す!!簡単肩甲骨はがしストレッチ【猫背改善】 - YouTube

 

ではまた

頭痛01 頭痛の治療と対策

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頭痛に関する記事の続きとなります。

前回の記事で原因と分類について書いているので、そちらも併せてご参照ください。

 

 

khachi.hatenablog.com

 

今回は頭痛の治療についての記事になります。

 

 

 

前回挙げた頭痛に対する治療薬をまとめます。

 ・片頭痛

 ・筋緊張型頭痛

 ・不定愁訴としての頭痛

 

 

片頭痛

簡単に、頭痛が起きる原因についてわかっていることを記載します。

 

脳神経である三叉神経(さんさしんけい)血管系が活性化、神経原性の炎症が引き起こされることが頭痛の原因であると考えられています。

 

その過程で、セロトニン、カルシウム遺伝子関連ペプチド(Calcitonin gene-related peptide ; CGRP)や、サブスタンスP、neurokininA等の神経伝達物質が血管を拡張させると言われています。

 

血管の拡張により周囲に炎症が発生、神経を伝って刺激が中枢に伝達され、頭痛や嘔気等様々な症状が拡散することが分かっています。

 

詳しくは以下のPDFを見てみて下さい。

 

臨床神経「片頭痛の病態に関する最新の知見2020」

https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/060010020.pdf

 

 

片頭痛の予防薬

予防薬は発作自体の頻度を下げる薬です。

以下のようなものが現在使用が可能です。

 ・カルシウム拮抗薬(ロメリジン等)

 ・β遮断薬(プロプラノロール等)

 ・抗うつ薬(アミトリプチン等)

 ・抗てんかん薬(バルプロ酸

 ・ビタミンB12

 ・ロイコトリエン拮抗薬

  ・抗セロトニン

 ・ACE/ARB阻害薬

 

上4つは頻用される薬剤です。

カルシウム拮抗薬、β遮断薬、ACE/ARB阻害薬は高血圧症(や頻脈)に使用される薬剤です。

 

特にカルシウム拮抗薬は良く使用される予防薬で、前述の頭痛の機序にもCGRPが関わっていることから予防効果が期待されます。

 

抗うつ薬、抗てんかん薬による予防効果は臨床的に実証されているものの、その機序は不明です。前述のCGRP関連ではないかと言われています。

 

また、片頭痛を誘発する食材や習慣を避けることも重要です。

・チョコレート

・加工肉

・赤ワイン

・強い光や音、におい

・睡眠不足と過眠

 

 

発作時の治療薬

・トリプタン製剤

・鎮痛薬

漢方薬 

  呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

  黄連解熱湯(おうれんげねつとう)

  三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)

  抑肝散(よくかんさん)

  逍遥散(しょうようさん)

  五苓散(ごれいさん)

  桂枝人参湯(けいしにんじんとう)

 

トリプタン製剤

日本では五種類の薬剤が使用可能です。

簡単に説明すると、薬の効果発現速度や持続時間が各薬剤で異なります。何故か合う合わないもあるため、幾つか試す必要があります。

 

このサイトが比較的まとまっていたため、御参照下さい。

 

www.ne.jp

 

基本的に頭痛が始まった直後に使用し、それ以上頭痛を悪くしないという効果があります。

 

 

鎮痛薬

痛みに対して、ロキソプロフェンやアセトアミノフェン等を使用します。

 いわゆる対処療法です。

 

 

漢方薬

予防薬としても効果がありますが、発作時に使用することも多いです。

 

茱萸湯(ごしゅゆとう)

片頭痛に対する第一選択、胃に水分が停滞し冷え(寒飲;かんいん)頭痛が生じる症例に。

繰り返す頭痛やそれに伴う嘔吐、体の緊張に使用

体力が低下して足が冷える方に適応あり。

逆に体に熱がこもる方にはつかえない(裏熱;りねつ)。

 

五苓散との併用や、トリプタンとの併用で他界頭痛軽減効果の報告あり。

五苓散は水が溜まる(水毒)方で、嘔吐や下痢を伴う頭痛に。

 

 

黄連解熱湯(おうれんげねつとう)

三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)

頭に熱がこもる、充血を伴うような症例に使用。

体力中等度、のぼせやいらいらのある症例に。

 

 

抑肝散(よくかんさん)

いらいらが強く、歯ぎしりをしたり、舌を出しにくいような症例に。

 

 

逍遥散(しょうようさん)

訴えの多く定まらない頭痛に使用。

冷えやのぼせを訴える方に適応がある。

 

 

桂枝人参湯(けいしにんじんとう)

体力が低く胃腸の弱い方向け。

 

 

筋緊張型頭痛

疼痛時の治療

漫然と頭痛やだるさ、肩こり等を訴えているため、発作というものは少ないです。頭痛を普段より強く感じることはあるため、治療の開始はいつでも良いでしょう。

 

漢方薬

  葛根湯(かっこんとう)

  釣藤散(ちょうとうさん)

  抑肝散(よくかんさん)

・鎮痛薬

・筋弛緩薬

抗不安薬

 

漢方薬

葛根湯(かっこんとう)

筋緊張型頭痛に第一に使用される。

実証(≒体力がある)の方に有効で、虚証の方には桂皮加葛根湯を使用。

慢性的な肩こりや頭痛、寝違えた際等にも

 

 

釣藤散(ちょうとうさん)

体力がある方の頭痛に使用される。

ストレスが強く(肝陽上亢)、のぼせや耳鳴り、不眠を伴う方に。

 

心窩部のつかえや食欲不振がある場合にも適応がある。朝に強く、日中緩和されるような方に良い。

 

 

抑肝散(よくかんさん)

ストレス、いらいらのある方に。

嘔気があれば抑肝散加陳皮半夏等も。

 

 

鎮痛薬、筋弛緩薬、抗不安薬

ロキソニン

・エペリゾン

エチゾラム

 

上記の様な薬剤が使用されることがあります。

しかしいずれも対処療法にすぎず、副作用も懸念されるためあまり推奨されません。

 

筋弛緩薬は緊張が強い筋肉を強制的に弛緩させるもので、ふらつきやだるさ、めまい等を誘発することがあります。

 

抗不安薬はいわゆる「鎮静薬」であり、精神的な緊張を弛緩させることで効果を発揮します。しかし上記筋弛緩薬同様副作用の懸念があります。特にだるさや意欲の減退、中毒性には問題があり、常用するとやめられなくなる方もいる程です。

 

 

予防方法

基本的には生活習慣の悪化から肩や首の筋緊張が亢進しているために起こります。予防には運動習慣やストレッチを中心とした生活指導が必須です。

詳細は前回の記事をご参照下さい。

 

 

不定愁訴としての頭痛

今までの記事で既に治療方法は登場しています。

筋緊張型頭痛と同様に生活指導を導入し、逍遥散(しょうようさん)を中心にいらいらや不眠等に応じて漢方薬を使い分けることが有効です。

 

基本的に精神的な要素が過分にありますが、抗不安薬睡眠薬焼け石に水であることが多いです。常用しているとやめられず、次第に活気もなくなっていくため注意が必要です。

 

食事療法

また、上記頭痛全般に使えるのが食事療法です。

頭痛時に効果があるものを挙げていきます。

・アーモンド

・ヨーグルト

胡麻(ごま)

・紅茶

ハーブティー

・外感性頭痛に対する食材

 風熱

 風湿

 風寒

 

 

アーモンド

 マグネシウムによる血管収縮/拡張の調節が期待されています。片頭痛に対する予防効果も一部報告があります。

 

www.webmd.com

 

動脈硬化に対する効果もありますが、過量摂取は尿酸値の上昇含め注意が必要です。

 

こちらは私も常食しているものです。

表面に少し砂糖のコーティングがあり、紅茶や珈琲によく合います。 

 

 

ヨーグルト

カルシウム不足腸内環境を改善するためと考えられています。欧州の一部地域ではそういった習慣があるそうです。

 

今後記事にしたいとは思いますが、脂肪分を含まないヨーグルトが流行っています。無論脂肪以外にも多数の栄養素も含まれていますが、乳製品の良い点はその脂肪分にあるということは有名です。

 

過剰な脂肪制限は、果たして健康的なのでしょうか?

 

 

胡麻(ごま)

様々な栄養素が含まれる非常に優れた食品です。ビタミンB群やEが豊富で、エストロゲンのバランスを調節すると言われており、生理時の頭痛や、筋肉の血流が悪い筋緊張型頭痛等に効果が期待されます。

また、前述のマグネシウムも豊富です。

 

以前紹介した、胡麻(ごま)と胡桃(くるみ)を豆乳にいれたホットドリンクは、そういう意味でも有効でしょう。

胡麻も白と黒両方つかうことで、臓器の機能を補う効果が期待できます。

 

 

 

紅茶

紅茶には体を温める「温性」があり、内蔵を温めることで気血の巡りを改善し、頭痛を軽減することが期待できます。

 

またクコの実を入れて疲労回復を、シナモンで内臓から体を温め睡眠を助ける「熱性」も期待できます。

 

 紅茶には苦味があり、苦味には「心;しん」つまり神経を安定させる効果があります。

 

これは推測ですが、紅茶の種類も影響すると思います。ダージリンやそのfirst flash(ファーストフラッシュ)等の若い紅茶には苦味があまりありません。

 

そう考えると、秋摘みであるAutumnal(オータムナル)や、よりコクがあり味わいの深い品種を選ぶとよいのではないでしょうか。

 

個人的にはセイロンが良いと考えています。ミルクティーにしても負けない強い味わいがあり、香りも高いためです。

 

無論、冷たい紅茶ではなく、温かいものを飲むようにしてください。

 

 

この辺りが無難でしょうか。

 

 

ハーブティー

ペパーミントに血管収縮効果があり、ラベンダーには鎮静効果が、ローズマリーは鎮痛薬に使われるほどです。カモミールも同様です。

 

ハブティーの香りには何れも鎮静作用があるともいわれており、取り入れてみるのもいいかもしれません。

 

 

外感性頭痛に対する食材

前回の記事で書いた通り、外の環境が原因で頭痛が生じる場合があります。その際に良いとされる食材を記載します。

 

風熱 冬以外、暑く汗がでてのどが乾く

   せろり、白菜、ゴーヤ、キュウリ、トマト

   リンゴ、ナシ、キウイ、豆腐、緑茶

 

風湿 頭が重い、胸が苦しい、食欲がない等

   雨が降る湿気の多い時期に

   ねぎ、大葉、生姜、みょうが

風寒 寒い時期に

   ねぎ、大葉、生姜、シナモン

 

春夏で暑い時はトマトや豆腐、緑茶が使いやすいです。

 

蒸し暑い時や寒い時は葱、大葉、生姜でしょう。

特に寒い時は、ミルクティーとシナモンも使い勝手が良いです。

 

 

これは個人的な趣味ですが、少し疲れたと思った時はシナモンスティックの臭いを嗅いでいます。ゆっくり深呼吸するとリラックスできます。

 

 

 

慢性的に頭痛がある方は、色々と試して導入してみて下さい。西洋医薬が必要になる場面もありますが、生活習慣に伴うものだと効果が薄く、いつまでも頭痛が無くならない、ということが多いです。

 

日々の習慣を見直し、生活の質を上げたいものです。

 

ではまた

頭痛00 頭痛の種類と原因

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頭痛で悩まされている方は多いです。

 

身近にも慢性的な頭痛を持っている方もいると思いますが、統計学的にもとても多いことが分かっています。西洋医学的には、頭痛は「Common disease」なのです。

 

しかし一部の頭痛を除き、治療は対処療法が基本となる場合が多いです。

 

今回は頭痛についてまとめてみようと思います。 

 

 

頭痛とその分類

頭痛とは、頭部の一部ないし全体に生じる疼痛の総称で、病気や体調に伴い一時的に出現するものから、慢性的に繰り返すもの等様々です。

 

原因も多岐にわたり、国際的な分類である

ICHD-3β(International Classification of Headach Disorders 3nd editionβ)には300種類以上の原が記載されています。

 

www.jhsnet.net

 

大まかに分けると頭痛には一次性と二次性があります。

 

一次性とは、頭痛そのものが原因となるもので、片頭痛等がそれに該当します。

二次性とは、他に原因があり症状として頭痛が生じるもので、脳出血や脳腫瘍等が該当します。

 

頭痛診療の場合、まず二次性を除外する必要があります。理由としては、二次性頭痛の原因を見逃すと病状が悪化する危険性が高いためです。

 

特徴としては、危険な兆候(Red flag signを見ていきます。

 

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図. Evidence-Based Diagnosis in primary care : 150, 2008.

 

こういった特徴がある方は要注意で、採血やCT検査等の必要性があります。

逆に、そうでない方は急ぐ必要はなく、頭痛外来や脳神経内科外来を予約し診療を受けてください。

 

 

疾患の解説

頻度の高い頭痛について簡単に解説します。

片頭痛

・筋緊張型頭痛

不定愁訴としての頭痛

 

二次性頭痛の頻度はそこまで高くないため、明らかに上図の危険な兆候に合致しなければ検査は必要なく、経過を見ることが多いです。

 

 

片頭痛

日本人の8.4%が罹患し、経済損失は2,880億円に上るとのことです。

患者も多く、困っている方が多いということです。

 

勘違いしている方が多いですが、頭の片一方が痛ければ片頭痛というわけではありません。診断基準もあり、一応検査項目もあります。

 

片頭痛には特徴があり、それに合致するのかが重要となります。

簡便に診断する場合、「POUNDing」といわれるスケールを使用します。

 

これは症状や特徴の頭文字です。

 Pulsating 拍動性

 hOurs   持続時間 4-72時間

 Unilateral 片側性

 Nausea  嘔気

 Disabling 日常生活に支障

 

各1点で加点し、3点以上ではリスクが高く、2点以下の4倍近いと考えられています。

 

詳しく知りたい方は以下をご参照ください。

 

www.jhsnet.net

 

 

しかし注意事項が二つあります。

一つ目は片頭痛を疑う所見は他にも多数あるということです。

 

以下の様な特徴がある場合は疑われます。

 ・体動による症状の増悪

 ・前兆症状

 ・感覚過敏

 

体を動かすと頭痛や嘔気が強くなるため、横になっていたいと訴える方が多いです。

 

前兆としては視覚、感覚、言語の異常がでることがあります。視覚異常では閃輝暗点(せんきあんてん)が有名で、視野にぎざぎざした幾何学模様が見えることが典型です。

 

感覚異常では手足のしびれや違和感などが、他には抑うつやいらいら、あくび、眠気、肩こり、胃腸の異常等が出ることがあります。

 

感覚過敏としては、光過敏や音過敏が有名です。光が眩しいため暗所を好み、音が煩わしいため部屋を閉め切ることもあります。

 

二つ目は上記の条件に合致しない片頭痛が珍しくないということです。

例えば4割の方で両方に痛みが出たり、3割の方で前兆がなかったり、逆に前兆のみの方もいるなど、診断に苦慮することも多いです。

 

そういった場合は診断的治療を行うことが多いです。

 

 

筋緊張型頭痛

緊張性頭痛ともいわれ、筋肉の緊張が亢進するために生じる頭痛になります。あくまで体感ですが、次項の不定愁訴と合わせると頭痛で困っている方の大部分がこれらに該当します。

 

意識していない方が多いですが、筋肉は毎日労働をしています。

頭は体重の10%、腕は20%ともいわれ、体重50kgの方だとそれぞれ5kg 、10kgに相当します。

 

これらを日々支えているわけですが、それをいたわる事を忘れがちです。そのため疲労が蓄積し、次第に筋肉の緊張が高まっていきます。

またトレーニングの習慣がなければ加齢に伴い筋肉量が減少し、その疲労に耐えられなくなります。

 

それにより肩や頭を引っ張り、頭痛が生じるわけです。高齢者の肩こりや腰の痛みも同じような機序になります。

 

筋緊張型頭痛の特徴としては以下が挙がります。

 ・若年女性

 ・デスクワーク

 ・姿勢が悪い

 ・運動習慣がない

 ・肩がこる

 ・ストレッチをしない

 ・なで肩

 

何れも筋肉の血流が悪くなる原因ばかりです。

また、入浴したりマッサージをすると少し良くなる場合も筋緊張型頭痛の可能性があります。血流が改善されれば一時的に良くなるわけです。しかしそういった介入は体質を変え原因を除いたわけではないため、あくまで一時的なわけです。

 

 

不定愁訴としての頭痛

いわゆる明らかな原因が西洋医学的に説明できないものや、精神的な要素が挙がります。

 

東洋医学的には、何れも大きく分けて二種類の原因が挙がります。

 

一つ目は臓腑や経絡の通りが滞るもので(不通則痛)、二つ目は気血の不足によるものです(不栄則痛)。

 

また漢方では、大きく外感(がいかん)と内傷(ないしょう)に分けて考えます。外感は体外からの原因(外邪:がいじゃ)のことで、内傷は内臓(肝脾胃)のことを指します。

 

外感頭痛は外邪により、内傷頭痛は肝脾胃の失調により発症すると言われます。

 

外邪とは、季節特有の邪気であり、別名を六淫(りくいん)といいます。

 ・風邪(ふうじゃ) 春

 ・暑邪(しょじゃ) 夏

 ・燥邪(そうじゃ) 秋

 ・寒邪(かんじゃ) 冬

 ・湿邪(しつじゃ) 梅雨

 ・熱邪(ねつじゃ) 高温による

 

要は外感頭痛は環境要因により、内傷頭痛は内臓の調子によるものです。

気圧や温熱等は前者で、生活習慣の乱れやストレスは後者に影響します。

 

こうみると、病名がなく保健収載されていないものでも頭痛の原因になるということが分かります。こういったものは検査しても問題がないと言われるわけです。

 

 

今回は長くなったのでここまでにします。

次回は具体的な治療方法や対処療法について記載していきます。

 

ではまた。